「ばあちゃん今日、暴れん坊将軍見て、高倉健って言った」

「それはただ間違えただけでしょ?」

太一は部屋で音楽を聞かなくなった。

太一のおばあちゃんっこぶりには驚かされる。

私にもおばあちゃんはいるけど、遠くに住んでいるしそんなに仲良くない。

高校卒業後、家を出ておばあちゃんとお店をしている太一とは、偉いとも言い難いが優しいんだと思う。


「そういえば昨日は火にかけた鍋素手で触ろうとしたんだよ。」

「危ない!なんかあったらすぐ電話してよね?」

実際、本当に何かあったときに電話されても、何をしていいかわからないだろう。

だけどその言葉をはくことで、太一と自分に安心感を与えるのだ。

気持ちはいつも不安定。

“25歳になったよ、どうすんの?”なんて、今はとても言えそうにない。