嫌がらせのように実家から届いたドレッシングとサラダ油を、籠に乗せ四日ぶりに晴れた道をギコギコ走った。

料理しないって言ったのに。
お金のほうが、数百倍助かったのに。親不孝な私はそう思ってしまう。

雨上がりの空はきれいな水色で、水溜まりに反射して空が二つになる。

「おすそわけ。最近見ませんねー太一さん」

皮肉たっぷりの笑顔で、サラダ油とドレッシングを差し出す。
助かります助かります、とふざけて笑う太一は、口数が少なく、いそいそと野菜の仕訳をしていた。

梅雨は、気持ちが滅入るから仕方ないのかな。

太一は店内を動き回っているが、私はその動きが無駄な動きのように感じる。

そういえば、おばあちゃんの姿がない。

「太一!太一!」

そう思ったとたん、裏の部屋からおばあちゃんの声がした。

「太一、おばあちゃん呼んでる」

太一は、振り返ろうとせず、大根を段ボールに入れていた。

「あれはサスケを呼んでるつもりなんだよ。」

よく見ると、おばあちゃんは手に猫の餌を持っている。

太一は振り返らずに続けた。

「最近なんか変なんだ。昨日は茄子にむかってお父さんって言って、茄子の箱に、じいちゃんの写真入れてた。」

太一!太一!という声はまだ聞こえる。

いてもたってもいられなくなって、おばあちゃんのもとに駆け寄ったけど、何を言えばいいかわからなかった。

太一の背中は、せっかく晴れた空を映しておらず、まだ雨が降ったままだった。


かわりたいとか、かわりたくないとか、そんなことにかまわず、かわってしまうものがある。

意地悪な時の流れは、おばあちゃんをかえていき

猫と太一の名前をかえた。