「ゆかちゃん、就活はどうなった?」

ぎくり。あからさまなギクリ顔に気付いたのか、太一はそれ以上何も聞かなかったが、こちらを何度かチラ見して、ニヤニヤしていた。

何をやっても続かないのが私。
口だけで終わってしまうのが私。

「昔バンドやってた話したっけ?」

「一回聞いた気がするけど覚えてないかも」

ごろりと寝転んで、私はゆっくり話した。
高校生の時の、つまらないバンドの話。

私はギターをしていて、ベースの子と喧嘩して、ドラムの子とも喧嘩して、最終的に解散した。

その後、ベースとドラムの子が新しいギターを見つけてバンドを組んで、学園祭でジュディマリのカバーを披露していた。

私は、真心ブラザーズがやりたかったんだ。

YUKIじゃない、倉持陽一になりたかった。


その言葉に太一は笑った。

「その部分だけ覚えてる。わかるよ、ゆかちゃん尖ってたもん。そこの商店街で歌ってた時」

「あーやめてやめて恥ずかしい」

“ミュージシャンになる”と言ったら、目的もなくこの町に来たことへのいいわけになるかなぁ、なんて、とりあえずで弾き語りしていた。

「なんだっけすごい歌詞のあれ」

ねえねえと、肩をつつく太一に背中を向けて耳をふさいだ。

その横に、背中をくっつけて太一が寝る。

思い出話も、たまには面白い。過去を振り替える方が、未来を考えるより楽なのだ。


「あ、“ドラマを見て泣く女の髪を切れ”だ。」

「太一!怒るよ!」