「ねえ、これくるり?」

「違うよ、おととい首藤くんが最近のバンドの曲集めたCDとか言ってもってきた」

CDプレイヤーのイヤホンを装着して確かめる。確かに違う。

「最近の“こういうの”は全部くるりみたいだね」

すぐに聞き飽きてイヤホンを外す。

今夜は月が丸い。

太一は、サラダ味のお煎餅みたいだと言って、私は肉まんみたいだと言った。

「そいえば、首藤くんって誰だっけ?」

「そこの電気屋さんの息子だよ。高校生でバンドやってるって。ロックだって」

ああそんな子もいたっけなぁなんて笑いながら、CDプレイヤーを消す。
音楽が好きな人間は星の数ほどいる。
音楽を志すものも、星の数ほどいる。