アルバイトに行く前に、太一に会いに行った。
どうしようもなく、気まずい雰囲気。

おばあちゃんは、茄子の帽子も人参のマフラーも外して、かわりにキャベツみたいな色のカーディガンを着ていた。

一向に目を合わせようとしない太一は、また私が嫌な話をするのを避けているようだ。

「おばあちゃん、足は大丈夫?」

うんうん、とおばあちゃんは笑って、

「ゆかりちゃんの花嫁姿見るまではおばあちゃん元気でいなきゃあね」

とおどけてみせた。

その言葉にいてもたってもいられなくなって、私は引きつっているに違いない笑顔を振りまいてバス停にいそいだ。


きっと、おばあちゃんが生きているうちは、私と太一が結婚することはない。

そんなお金はないし、そんな未来、想像すらできない。

自分の花嫁姿なんて、ちっとも想像できないよおばあちゃん。

バスに乗り込むと、携帯電話が鳴った。