「ある日突然おばあちゃんが亡くなってしまったら、太一はどうするの?
お店はどうするつもりなの?
先のことは考えているの?」

そんなことを言った。


太一は私と目を合わせずにただお弁当を食べていた。

きっと、嫌な気持ちになっているに違いない。そうわかっていても、私はまだ続けた。

「おばあちゃんだって永くないんだよ?太一より先にいなくなるの、なんで何も考えてないの?なんで焦らないの?」

こんなこと、美味しいお弁当を食べている今言うべきじゃない。

わかっている。だけど、理絵ちゃんの言葉や、今の自分への不満が、次から次へと太一への不満へとかわって口から飛び出してしまう。

太一は箸を止めた。

「ばあちゃんが死ぬことなんて考えないし、先のことなんか決めてないよ。」

沈黙の中、きんぴらゴボウを噛む音だけがかすかに聞こえていた。

「現実的になってよ太一。」

この日私が吐いた最後の言葉だ。

立ち上がって部屋をあとにする太一の最後の言葉は何だったっけ。


「今、過ごしてる毎日が現実だよ。」