「山下達郎は偉大だよ。最近そう思う。」

「ゆかちゃんの偉大はすぐかわる。こないだは中島みゆきだったよ。」

公園の桜が満開になった。滑り台の上で、いつもの味気のない会話。
これでも二人にとってはお花見という立派な行事なのだ。

おばあちゃんの作ってくれたお弁当を食べる。半分くらい食べたら私の家に戻り、残りを食べる。


「ばあちゃんがね、ゆかちゃんの靴下屋さんに行きたいって言ってたよ」

「バスに乗っていかなきゃいけないんだから、無理に決まってるでしょ。それに、どこにでもある靴下だよ。」

おばあちゃんの足はどんどん弱くなって、最近はカートを押して歩くのがやっとだ。
私の前のアルバイト先のお蕎麦屋さんにも来たがっていたが、結局来れないままだった。

「ばあちゃん、こないだ布団から起き上がれなくて大変だったんだ」

太一の言う、こないだ、というのはおそらく二週間以上は前だ。

そうやって、いつも事後報告。
お弁当の大学芋についている胡麻を、つまようじでぷちぷち潰しながら、私はぶつぶつと喋りだした。