春とよぶにはまだ寒い三月。

出会いも別れもない。強いて言うなら、太一の家に住み着いていた猫のサスケが、新しい猫を連れてきたことくらい。

今日は靴屋のアルバイトが休みで、太一の家でごろごろしている。
おばあちゃんが押し入れから引っ張りだしてくれた古いアルバムを何時間も眺めていた。

おばあちゃんの旦那さん、すなわち太一のおじいちゃんと、若い頃のおばあちゃんの写真。

おじいちゃんは、30代で亡くなったと聞いた。

おじいちゃんになる前に亡くなってしまった。
おばあちゃんは、誰がどう見ても“おばあちゃん”で、立派なおばあちゃんだ。

太一が以前、おばあちゃんの話をしてくれたときのことを思い出した。