「ゆかちゃんー、新しいギター買うって言ったら怒る?」

眠りに就く前に電話が鳴ったかと思えば、そんな内容だった。

「そっちで何かあったの?」

「お父さんの掃除の仕事手伝ったらお金入ったー。あと親戚のおばちゃんたちが何かお金くれた」

どうしようもない奴。

ギターでも新しいアンプでも勝手に買いなさいと告げて最後に一言
「いつ帰るの」
と言った時には、もう電話は切れていた。


次の日の夜、家に帰ると太一はいた。
変化といえば、髪を切ったことくらい。
何だかほっとした私がいた。
くすぐったいくらいの笑顔を向けてくる太一の髪をくしゃくしゃ掻き回しながら鼻の頭を噛んだ。

「お父さん怒ってたよ。就職しなさいって。」

「そりゃあね。だめ息子。ギターは買ったの?」

そのまま床に倒れこんで二人は転がった。

「ううん、言ってみただけだよ。ゆかちゃんがギターもっかい始めたらいいなと思って」

布団を引っ張って、その上に乗っかる。

「面倒臭いから弾かないよ。太一がしなさいよー」

服を脱がしにかかる太一のセーターの中に手を入れる。


「やだー」


それ以上会話はなかった。

そのまま、いつもと同じ二人が始まった。