「ねー、葵和(きわ)。これ、どう思う?」


目の前にはティーン用のファッション雑誌。開かれたページには、でかでかと男性モデルが写っている。


「どうもこうもないけど…」

「こっちとあっち、どっちの人がカッコいい!?」

「うーん、こっちじゃない?」


私が指差したのは、キリッとした眉の、爽やかそうな男の人だ。


「へー、葵和ってこういうのが好みなんだ?」

「いやべつにそういう訳じゃなくて、好みがいなくて」


彼女はにやにやしたままだ。


「あたしは分かってるんだよ?中性的な顔立ちのあの人がいいんでしょ」

「……うるさいよ、梨花(りか)

梨花は屈託なく笑った。楽しそうだ。

「そういやさ。葵和、知ってる?」

「………何を?」


何やら神妙そうな顔で私を見る彼女は、何を言いたがっているのだろう。


空は明るく、私を見守ってくれているようだ。
何があっても、大丈夫だと。




「───唯月(いつき)くん、帰ってきたって話」




刹那、私の全ての思考が止まった気がした。