くらい夜が始まった。月はなく、灯りは人々の生活する電気だけだ。




「ねえ、」



くだらなさそうに君が呟いた、でもその瞳は何かの光を放っていて、神秘的だった。



「このまま、逃げ出してもいいかな。どうするのが正解だと思う?」


「知らないけど、私はいいと思うよ、たぶん」


「そっか、そうだよね」 



君が話をを終わらせて、空を見上げた。なにもないのに、と思うけれど、私はなにも言わなかった。




「それ、あげたやつ、だよね」




君は私のもつそれに目を向けた。私はそれをかかげてみせて、君はそれをじっと見た。




それはいつかの私の誕生日に君からもらった誕生日プレゼントだった。君がもっているありったけのお金で、私のために買ってくれたものだった。別に高くはないし、どこにでもあるようなものだけど、君からもらえて私は嬉しかった。