私は焦りながらも慌てて頭を動かした。



「はっはじめまして,綾瀬 呉羽と申します。今日はごちそうになります」



頭を下げようとして,月奈さんの両手が私に伸びていることに気付く。

なんか……デジャヴ?

月奈さんは流れるように右手を私の左手と絡め,左手で私の腰を抱き寄せながら,顔を私の耳元に近づけた。



「いらっしゃい,呉羽ちゃん。好きなだけ泊まって行って? 歓迎するわ」



こんなこと,蓮にもされたことない。

それにこの人,声も綺麗……

沙羅ちゃんも大人になったらこんな感じになるのかな?

流石本家の大人,あの2人を平気で超えてくる。



「ちょっと母さん……!」



目ずらし焦った声の蓮。

ぼーっと横目で見つめると,月奈さんは私の左手に絡めていた右手をするりと離した。