「はぁ……」

スマホの電源を切ったり入れたり、何回繰り返しても、未読メッセージはゼロ


「なに大きなため息ついてるの?ため息は幸せを逃しちゃうんだよ!」


わたしの前の席でポッキーをかじりながらそう言ってきたのは親友である一樹(かずき)

本人は「男っぽい名前だから嫌だ!」と言っているが誰にでもハッキリと意見が言え、隠し事が苦手なこの子にピッタリの名前だと思う。ちなみに一樹は超絶美少女

この事を言ったら「絃には言われたくないよ」と笑われたけれど、わたしは全然可愛くない。感情を伝えるのが苦手で、ずっと人の顔色を伺っている弱い人だ


「そんで、お相手は彼氏さん?」

「ん」


玲於が転校してすぐの頃は毎日夜は電話をしていた。でも、試合前になり電話がなくなり、メッセージがなくなり、そのままズルズルと引きずって今ではこっちからメッセージを送っても既読がつくのは2、3日に一度くらい


「はー、絃にこんな顔させるなんて!あたしが彼氏だったらそんな顔させないぜ?」

「ダメだ。お前は俺のものだ」


キザったらしいセリフを言う一樹の後ろからヌッと大きな影が出てきた

正体は、武藤くん。彼は一樹の彼氏さんだ。一樹は陸上部のエース、武藤くんは水泳部のエースと運動神経抜群のお似合いカップルだ


「ごめんなさい!あたしは心も身体も、すべて絃に捧げているのです!」

「そんな……ボクを愛してはくれないのか!?ボクは君をこんなにも愛しているのに!」

「っぷ、あははははははは!!!」


わたしが思わず笑ってしまうとニッコリと笑って2人はハイタッチをした

こうやっていつもわたしを笑わせてくれるから、そんなところも大好きだ


「ありがとう!元気出た」

「「おう!」」


その後、誰と誰が付き合っているとか、昨日のテレビの試合の話とかをあーだこーだと話していると先生が教室に入ってきて授業が始まった