僕とナナは何もかもが違った。


スラリと伸びた手足も、まるで繊細な筆で描かれたかのような美貌も、頭の良さも、運動の出来も、友人の数も、何ひとつナナには敵わなかった。


でも僕とナナは同じだった。
全てを壊してしまいたくて、逃げ出したくて、僕らは度々夜のプールに忍び込んだ。


月光の下で会うナナは、死にたがりで弱虫で、涙に溶けて消えてしまいそうな女の子だった。


「じゃあ、ナナが教えてあげればいい。本当は触れるって」
「できると思う?」
「ナナさえその気になれば」
「……ケイが知ってくれていたら、十分」

ナナはプールの底に足をつけると、顔を拭った。
ナナが流していたかもしれない涙は、プールの水とひとつになって、もう二度と誰かに知られることはない。まるで月の涙と同じだと思った。