右手をギュッと握られた。


「どうした?」


振り返ると、なにかを訴えるように俺を見つめる桃香。

…そして。


「…して」


蚊の鳴くような声だったけど、この静まり返った密室には十分すぎるくらいに響いた。


「…しっ、してって…。お前…、意味わかってんのか…!?」


思いもよらない桃香の言葉に、俺のほうが慌てる。

せっかく、理性を取り戻したところだったのにー…。