分からない、どうして泣きたいのかは分からない。


ただ……急に胸が苦しくなって、なにか熱いものが込み上げてきて、解放された気がして……色んな感情が混ざって、泣きたくなった。


無性に泣きたいと思った。




「……あぁ。泣いていい」




甘く、優しい声が耳をくすぐって、ついに涙が溢れた。


お母さんっ……お父さんっ……。


昔、お父さんが私を高い高いしてくれたのを思い出す。



「ふっ……うぅっ……」



叶君はベンチに座って、私を膝の上に乗せた。


周りに泣いている顔を見られないようにしてくれているのか、叶君とは向かい合わせ。


すごく密着しているし、顔の距離も近い。


でも今はそんな事はいいの。


彼の前なら、泣いてもいいかなって、思った。


まだ会ったばかりなのに、そんなのおかしいけど、それでも優しいって分かったから、今は息できてるなって……思った。




「もっと泣け。俺の前なら、いつでもどんだけでも泣け」


「っ……きょ、うっ……くんっ……」


「全部、受け止めてやるから」




叶君のところから離れたくない。


こんなこと言って貰えたのは初めて。


叶君の近くにいたい。


そばに、いたいな……。


由希くん達も……きっと叶君がこんなにも良い人だから、
そばにいたいって、思ってるのかな……。


溢れ出す涙を、叶君はそっと拭ってくれる。


恐る恐る目を開くと、優しい微笑みを向けてくれる叶君。




「……叶君、私っ……叶君のそばにいたいっ……」