やっぱり彼は先に来ていて、やっぱり悲しそうな顔で
私を待っていた 

「お待たせ」
「いや、今来たとこ!」
そう言って切なそうに笑った
大丈夫。今、その顔を笑顔にしてあげる 
私の唯一の恩返しかな? 
「あのさ、別れよ?」
声が震えないように少し明るく言う
感情を読み取られないように下を向く
「……っっ!」
「今まで無理に付き合わせちゃってごめん
 いつも優しくしてくれて楽しかっー」
「待って!…なんで泣いてるの?
 泣きたいのはこっちなのに」
知らないうちに泣いていたようで
君に言われてやっと気づく
困ったようなやっぱり悲しそうな顔でこっちを見ている

「本当は、別れたくなんかない。ずっと隣にいたい。七瀬が…好きだから」

また下を向く
あぁ、また困った顔してるんだろうな
最後まで私は彼にそんな顔しかさせてあげられない

すると突然温かいものに包まれた
「俺も好きだよ。今も、これからも。
 だから、別れるなんて言わないでほしい」

そのあと、彼とたくさん話した。
お互い勘違いしていたようだ
「俺が小川をフると思ってた!?
 振るわけないじゃん、こんな好きなのに」
「うん…///」
「私も、好き…」
「はっっ!!?あーもう反則…」

私が上手に話せなくても大丈夫
彼はちゃんと理解してくれてるから
これからも誤解しあうこともあるはずだけど、私達なら
きっとのりこえていける

         私が上手に話せたら(完)