「海里の入れてくれた弁当は格別にうまかった!」

父は上機嫌で、なにも言わなくても私にお小遣いをくれた。
チョロい、チョロすぎる。

「神長からお嬢さんに返しておいてくれって言われたけど、なんだ?」

「内緒!」

「えー」

父は不服そうだが、知らないふり。

「神長さん、なにか言ってた?」

「別になんも言ってなかったが」

完全にふて腐れてしまった父を無視して自分の部屋に戻る。
完食してくれたのは嬉しいが、味の感想が聞けないのは残念。



次の日も神長さんの分のお弁当を作った。

「よかったら食べてください」

「……ありが、とう?」

神長さんの首が横にこてんと倒れる。

昨日も思ったけど、なんで疑問形なんだろうか。
もしかして迷惑、とか?

受け取ったお弁当を机の上に置くと、うまか棒を手にとって神長さんは止まった。
じーっとしばらくうまか棒を見つめたかと思ったら机の上に戻し、神長さんが振り返った。

「なに?」

「……なんでも、ない、……です」

……はぁーっ。

心の中で、ため息。
昨日の感想が聞けるんじゃないかって、期待したんだけど。
無駄、だったな。