「だって悔しかったんだもん。私はとーか君を手に入れる為に何をしたか、とーか君は分かってくれてるはずなのに。いきなり出てきたあの女がずっととーか君の近くに居るんだもん!」

背中を少し浮かせて振り返る。フェンス越しにカンナの家の屋根が見える。
カンナの親には道ですれ違うことはあるけれど、あまり話はしなくなってしまった。
平気な素振りで笑いかけてくるおじさんとおばさんを見ているのは辛かった。

「つばき、お前さ。約束を破ったのと同じなんだよ。俺はつばきを守る為につばきと一緒に居るって誓ったし恋人にだってなった。でもお前はまたカンナの時と同じやり方で俺を裏切った。」

「違うよ。とーか君が離れてしまうのが怖かった。本当にそれだけなの。とーか君がまた他の人の物になっちゃったら私…どうしていいか分かんないよ。」

「だからって、俺が一番されたくないやり方で俺を騙したのか?」

「騙してなんかない!もう二度と…絶対にこんなことしない!今度こそ本当に約束するから…。」

つばきが懇願する様に、俺の手を掴んだ。俺はその手を離して言った。

「お前とは別れる。もう信用出来ない。俺のことを好きだっていうのも嘘なんだろ。こんなことされたらやってけないし、もうお前を守れない。結局…犯罪者は犯罪者なんだな…。」

アスファルトを睨みつける様に見ている俺の肩をつばきが掴んで揺さぶる。片手でつばきの右の手首を掴んだ。