八月十五日。暦の上ではお盆最終日。
紺色に花火の模様の浴衣を着たカンナを直視出来ないでいた。髪の毛は後ろで一つにまとめられている。後れ毛も大人っぽくて、綺麗だ。
俺とカンナは二人で街の花火大会に来た。今年は過去最多、二千発の花火が上がるらしい。
県内で一番大きい花火大会だから、想像以上に人が多かったし、同級生にも何人も会って、そのたびに二人で居ることを冷やかされたけれど、嫌な気持ちにはならなかった。
照れ臭かったけれど、嬉しさの方が大きい。
つばきも誘ったけれど、用事があるからと言って断られた。用事って何ってカンナが聞いたけれど、「秘密」と意味深にはぐらかされる。
本当は用事なんか無くて、つばきなりに俺とカンナに遠慮したんじゃないかと思う。
「あ、透華くん。りんご飴買っていこうよ。」
出店の前でカンナが俺のTシャツの袖を引いた。
「りんご飴?」
「うん。つばき、夏祭りの時りんご飴買えてなかったでしょ。今日だってたぶん、我慢したんだよ。お土産に買っていこうよ。」
「そうだな。」
俺とカンナはりんご飴を売っている出店のおじさんに「りんご飴、一つ。」と言った。その声が揃っていて、顔を見合わせて笑った。
おじさんは好きなの選んでいいよと言ってくれた。できるだけ大きくて、できるだけ赤い色が濃い物を選んだ。ビニールの手提げ袋に入れて貰って受け取った。
「溶けないかな?」
「もう一回冷蔵庫にでも入れてれば平気だろ。」
「そうだね。」
俺とカンナは手を繋いで、花火大会の会場の港に向かった。花火が上がるまではまだもう少し時間はあるけれど、できるだけいいポジションを取ろうと、沢山の人が集まっている。
「どこでもいいよね?」
カンナが俺を見ながら言った。
「俺はどこでもいいよ。だって…。」
「どこで見たって花火が上がるだけで最高だよね。」
まるで地元を揶揄するかの様に言って、俺達は笑った。もちろん、地元にだって良いところはある。この前の夏祭りだって、楽しかった。
それでもこういうイベント事に関しては、勝ち目は無い。
今年は特別だった。カンナと二人だけで花火大会に来たのは初めてで、カンナが浴衣を着たのも、小学生以来だった。
同い年なのに、大人になったなぁと思った。想像以上にカンナは綺麗で、一生忘れたくないと思った。
心の中でつばきに感謝すらした。明日からはつばきの我が儘だっていっぱい聞いてやろうと思うくらい、俺は有頂天だった。
紺色に花火の模様の浴衣を着たカンナを直視出来ないでいた。髪の毛は後ろで一つにまとめられている。後れ毛も大人っぽくて、綺麗だ。
俺とカンナは二人で街の花火大会に来た。今年は過去最多、二千発の花火が上がるらしい。
県内で一番大きい花火大会だから、想像以上に人が多かったし、同級生にも何人も会って、そのたびに二人で居ることを冷やかされたけれど、嫌な気持ちにはならなかった。
照れ臭かったけれど、嬉しさの方が大きい。
つばきも誘ったけれど、用事があるからと言って断られた。用事って何ってカンナが聞いたけれど、「秘密」と意味深にはぐらかされる。
本当は用事なんか無くて、つばきなりに俺とカンナに遠慮したんじゃないかと思う。
「あ、透華くん。りんご飴買っていこうよ。」
出店の前でカンナが俺のTシャツの袖を引いた。
「りんご飴?」
「うん。つばき、夏祭りの時りんご飴買えてなかったでしょ。今日だってたぶん、我慢したんだよ。お土産に買っていこうよ。」
「そうだな。」
俺とカンナはりんご飴を売っている出店のおじさんに「りんご飴、一つ。」と言った。その声が揃っていて、顔を見合わせて笑った。
おじさんは好きなの選んでいいよと言ってくれた。できるだけ大きくて、できるだけ赤い色が濃い物を選んだ。ビニールの手提げ袋に入れて貰って受け取った。
「溶けないかな?」
「もう一回冷蔵庫にでも入れてれば平気だろ。」
「そうだね。」
俺とカンナは手を繋いで、花火大会の会場の港に向かった。花火が上がるまではまだもう少し時間はあるけれど、できるだけいいポジションを取ろうと、沢山の人が集まっている。
「どこでもいいよね?」
カンナが俺を見ながら言った。
「俺はどこでもいいよ。だって…。」
「どこで見たって花火が上がるだけで最高だよね。」
まるで地元を揶揄するかの様に言って、俺達は笑った。もちろん、地元にだって良いところはある。この前の夏祭りだって、楽しかった。
それでもこういうイベント事に関しては、勝ち目は無い。
今年は特別だった。カンナと二人だけで花火大会に来たのは初めてで、カンナが浴衣を着たのも、小学生以来だった。
同い年なのに、大人になったなぁと思った。想像以上にカンナは綺麗で、一生忘れたくないと思った。
心の中でつばきに感謝すらした。明日からはつばきの我が儘だっていっぱい聞いてやろうと思うくらい、俺は有頂天だった。