海辺の町。防波堤を歩く。百メートルほど進むと、高さは五メートルくらいになる。
そこに立って海を覗き込むと足がすくむ。
泳げない俺は、この高さから海を覗き込むことは苦手だ。
格好悪いよなぁって思うけれど、そんなこと気にもならなかったのは、「透華くんのそういう可愛いところも好きだよ。」と、彼女が言ってくれていたから。
カンナ。俺の最愛の彼女で、初めて心から愛した人。最後に愛した人。
まだ十七歳なのに、最後だなんて大袈裟かもしれない。でも本当のことだ。
カンナは今はもう、この世には居ない。
十六歳。高校一年生の夏休みに死んだ。
殺された。あの女に。
カンナも泳げなかった。
海沿いの田舎町で育った俺達は幼馴染で、小さい頃から海も川も数えきれないくらい行っていたのに、何故か全然泳げなくて、砂でお城や山のトンネルを作ったり、珍しい形の石や綺麗な貝殻を拾ったりして遊んでいた。
小さい頃からカンナが好きだった。
恋人になれた中三の春。卒業式を控えていた。
付き合ってくださいと言った俺に、カンナは「遅いよ。」って言って笑ってくれた。
幸せだった。たった五ヶ月間の夢。
あの女…、俺とカンナの幼馴染。つばきに、カンナは殺された。
泳げないカンナは、この波が打ち付ける堤防の下、海の上で浮いていた。
不運な事故として片付けられたけれど、俺は知っている。全てあの女がやったんだと。
死のうと思う。この世に未練は無い。カンナが居ない世界には夢も希望も愛も無い。
最期に残された使命。
堤防の先。静かで暗くて黒い、海。
あの女が笑って手を振っている。
カンナ。あと少し。もう少しで逢えるよ。
この復讐を成し遂げて。
そこに立って海を覗き込むと足がすくむ。
泳げない俺は、この高さから海を覗き込むことは苦手だ。
格好悪いよなぁって思うけれど、そんなこと気にもならなかったのは、「透華くんのそういう可愛いところも好きだよ。」と、彼女が言ってくれていたから。
カンナ。俺の最愛の彼女で、初めて心から愛した人。最後に愛した人。
まだ十七歳なのに、最後だなんて大袈裟かもしれない。でも本当のことだ。
カンナは今はもう、この世には居ない。
十六歳。高校一年生の夏休みに死んだ。
殺された。あの女に。
カンナも泳げなかった。
海沿いの田舎町で育った俺達は幼馴染で、小さい頃から海も川も数えきれないくらい行っていたのに、何故か全然泳げなくて、砂でお城や山のトンネルを作ったり、珍しい形の石や綺麗な貝殻を拾ったりして遊んでいた。
小さい頃からカンナが好きだった。
恋人になれた中三の春。卒業式を控えていた。
付き合ってくださいと言った俺に、カンナは「遅いよ。」って言って笑ってくれた。
幸せだった。たった五ヶ月間の夢。
あの女…、俺とカンナの幼馴染。つばきに、カンナは殺された。
泳げないカンナは、この波が打ち付ける堤防の下、海の上で浮いていた。
不運な事故として片付けられたけれど、俺は知っている。全てあの女がやったんだと。
死のうと思う。この世に未練は無い。カンナが居ない世界には夢も希望も愛も無い。
最期に残された使命。
堤防の先。静かで暗くて黒い、海。
あの女が笑って手を振っている。
カンナ。あと少し。もう少しで逢えるよ。
この復讐を成し遂げて。