「寒くはない?」

 青年は私に問いかけて、衣を手繰り寄せる。
 そしてもう一枚、私に掛けてくれた。

「はい、大丈夫です」

 温かい。
 こんなにも穏やかな温もりに包まれたのは、初めてだ。
 たとえ助けてくれた青年だとはいえ、この身を預けるなんて大胆な行為は慎まなくてはならないけれど。
 でも、本当に青年の腕の中が心地よくて、私は素直に甘えていた。

「私には沢山の弟達がいてね。
世話をするのには慣れているから、遠慮はいらない」

「そうなんですか?」

「うん。
私はね、五男一女の兄弟の長男だから」

 そう言われて、私は何だか納得した。