「あ、良かった。
目が覚めたんだね」

「え……?」

 声と同じく穏やかな笑みを浮かべる青年の顔が、私のすぐ目の前にある。
 状況がよく理解出来なくて硬直していると、また青年が柔らかく笑った。

「突然ごめんね。
でも、もうしばらく我慢して。
君、低体温になってたんだよ?」

 そこまで言われて、ようやく私はちらりと辺りを見回した。
 最初に目に飛び込んできたのは、私の体を包んでいる柔らかな色合いの衣。
 そして、私の体を抱きしめる、逞しい青年の腕だった。

「あ、あの……っ」

「うん、言いたいことはわかっているよ。
本来なら、女性の身に軽々しく触れてはいけないからね。
でも今は、君を助けるためだから」

 何もやましいことはないから、安心してね。
 青年は穏やかな声で語りかけ、再び優しく頭を撫でてくれた。