「────………」

 少しずつ朦朧(もうろう)としはじめる意識の中、ゆっくりと閉ざされていたはずの扉を開く音が、ふいに響く。
 それはやけに大きく聞こえ、私は微かに瞼を震わせた。

 あぁ、幻聴だ。
 あるはずのないものを求める、最後の。

 見たくても目を開けて確かめて見る力もなくて、私はただ、そのまま床に身を預けていた。

 けれど、その時だった。

「君、大丈夫!?」

 ひどく焦りに満ちた、私よりも年上だろう青年の声が投げかけられる。
 それと同時に、ふわり、と温かい何かに体を包まれた。

「こんなに冷たくなって……っ!
眠ったらダメだ、起きていて!」

 ぎゅっと体を何かに抱きしめられ、必死な声が私を呼ぶ。
 けれど、そんな青年の声に答えることも出来なくて。

 私は青年の声をどこか遠くで聞きながら、ゆっくりとそのまま意識を手放した。