それを今でも根に持ち、仲を引き裂いた憎い相手との子である私を、鬱憤(うっぷん)晴らしにでもしているのだろう。

 父もやはり愛情を持てなかったのか、母の元へはしばらく通いがない。
 しかし、自身の正妻なので無下にも出来ないから同じ邸の北の対に住まわせている、という事務的な関係でしかないようだ。

 その代わり、父の妾は本当に想う女性を娶ったらしい。
 一男一女の子どもを授かり、大切に育てているようだ。
 私にとっては、母の違う弟と妹。
 やはり好きな相手との子どもだからか、目に入れても痛くないほどに可愛がり、多くの時間を共に過ごす。

 けれど、そんな愛情のない母との間に生まれた私は、父も持て余す存在でしかなく、あまり共に過ごした記憶がないほどだ。

 どこにも行き場のない感情を持て余しながら、私はゆっくりと目を閉じた。
 どうしようもなく、悲しい。
 でも、目からは一筋すら、涙は出ない。
 それすらも悲しいのに、感情の吐き出すところがなくて。
 私は苦い笑みを口元に浮かばせ、ぱたり、と氷のように冷たい床に体を投げ出した。