「そんなにも、私が嫌いですか」

 扉を叩く拳を強く握り込み、ぐっと歯を噛み締める。
 涙なんて、もう出ない。
 すでに枯れ果てた。
 忘れてしまった。
 
 最後に泣いたのは、いつだっただろうか。
 それすらも、わからなくなっていた。

 いくら叫んでも、誰も私を助けてくれないことを知ってるから。
 頑張って外へ出ようとしていることすら、虚しくなって。
 やがて力尽きて、扉の前でへたり、と座り込んだ。

「私は、何もしていないのに……」

 母には、父と結婚する前に恋人がいたらしい。
 けれど、母の実家の者達に反対され、政略結婚させられたという。
 お腹にその人の子も授かっていたらしいが、やはり家人により堕胎させられた。