旅するギャラリー『武々1B』の
本部スタッフである
シオンは、
古都、京都駅の
大階段を使った
グラフィックイルミネーションが、
年末色の落ち着いた雪華に
なっているのを
1人静かに見てから、
中央コンコース上空の
空中径路を歩いて
ロウソクの形をした京都タワーの
ライトアップをみていた。
この場所は
地上45メートルの高さから
駅を俯瞰して見れる、
高所スポットでありながら、
古都の街並みも一望できる
トンネル イルミネーションだ。
いつもなら、
白のイルミネーションなのを、
雨や星の空模様や
カラフル演出に変わる限定期間。
しっとりとした光の中で、
空中から
駅を散歩する気分になれる穴場は
シオンのお気に入りの場所だ。
「駅なのに、夜の森にいる
みたいなんだよねーっ。」
シオンはそう、独り言を言って、
写真をSNSにアップする。
大階段の
グラフィックイルミネーションは
シーズン毎に柄が変化。
5日前まで
タワーはクリスマスカラーに
ライトアップされて、
クリスマスの柄が 大階段に出現し、
巨大なタペストリーに
なっていたはずで、
そして
あと1日もすれば
新年を祝う柄へと変化し
賑やかになる。
「実は、年末の柄は5日間だけ
出現する、レア柄なんだよね」
SNSにアップした写真に
今、言った独りごとを書き込み
今度は
目の前のタワーを電話に納めた。
シオンはしみじみと
眼下の駅や
シックな ブルーカラーになる
トンネルの遠くを見やる。
気分が少しブルーなのは
年末限定の雪華柄のせいでなく。
午前中まで
大阪にいてたシオンとって、
昼に着いた
古都のすっと背筋が伸びる
空気感の駅に
気圧されるからでもなく。
「何百年も変わらないって、
やっぱり スゴいことなんだ。」
言い聞かせて、
撮ったタワーのライトアップを
今度は
本部の先輩スタッフ=ヨミに
写真とコメントを送信しておく。
「せっかくだから、aloneだけど、
見ていこうっと!」
古都の駅には
イルミネーションの季節に
お伽噺みたいな場所が
あった事を思い出したのだ。
シオンは、さらに
空中径路の奥へと進む。
観光客もあまりこない場所。
目指すのは
駅ビルの7階、東広場。
ここは駅のメインルートではなく
離れの端にある為、
人も殆どいない。
なのに
光の植物園をイメージした
イルミネーションの中
光で装飾されたガセボや、ベルが
まるで
シンデレラのカボチャの馬車
みたいに キラキラ光っているのだ。
「わあ、、やっぱり素敵ー」
ガセボの周りには、
白いガーデンテーブルセットが
取り囲んで、乙女チック。
カフェが 開いていた為、
シオンまだ終えていない
食事を ようやく ここに
決めた。
というのも、いつもなら
祖父に連れられて行った錦市場で、
総菜を買って
途中で、食べるのが定番。
なのに
老舗総菜屋に足を運んだ
シオンは、
「えっ、、ウソ、、」
シャッターに貼られた
閉店の張り紙に
呆然とした。
それはあまりにショックだった。
世界中に蔓延した
新型ウイルスによる
自粛の影響は、
古都の台所を支える
古くからの市場さえも
様相を一変させ、
老舗の軒先を消していたのだ。
シャッター前に力なく立つシオンは
顔を 歪めさせた。
「万願寺のこんぶあえ、
食べたかったなあー。ざんねん」
シオンにとって、
錦市場の総菜は
大切な思い出の味だった。
「あの味、忘れちゃうのかな。」
年末の錦市場にしては、
余りに人手が少ないから予感は
していた。が、、、
ガックリと 肩を落としていると、
向かいの店から
植物園の近くのスーパーに、
総菜屋の店主が作る総菜が
そのまま出ていると
教えてくれたのには、
救われた。
何気ない情報でも、
心が前向きになれる。
ブンブンと相手の手を
両手で握り さんざん礼を伝えて
シオンは
そのまま駅に来たのだ。
永遠にあると、思っていたモノに
変化が訪れて、戸惑う自分を
打ち消しながら
着いた古都のメインステーションは
御影石色の黒が目に沁みた。
隠したブルーな気分が再来する。
でも、ここはちゃんとある。
『いらっしゃいませ。この時間は
イタリアンビュッフェになります
が、よろしいですか?』
古都の夕食処は基本
どこも人が多いが 当たり前だった。
自粛ニュースになる
このご時世でも、
駅ビルは 他よりは
観光客がいるように感じる。
「全然かまいませんっ。」
有数観光地のメインステーション。
その中にあって
いつも 静かにそして、好きな量を
食事出来るこの店は、
駅の一番端に位置する。
目の前は静かなガセボが
イルミネーションで浮かび上がり
その傍らに隠れるように
このカフェはある。
プレートを手に、
好きにアンティパストを選んで
パンとメインを
手早く盛り付け、
シオンは
ガセボのイルミネーションが
見える窓に 座った。
100年続く店舗があるから、
祖父は自分に この都の、
いろんな店を教えてくれた。
きっと この先
シオンの子供にも 教えていける
そんな場所が この古都には
沢山あると 言いながら。
前日に、シオンは
かつての勤務ギャラリーに
顔を出して、
頼まれていた引き継ぎの
最終を終わらせた。
ギャラリーの本部オフィスに
移動してからも尚、
顧客の引き継ぎが続いていたのも、
これで終わりだ。
フォークをクルクルさせると、
ムール貝入りラタトゥイユを
口に運んでシオンは外を眺める。
カボチャの馬車みたいに
輝くガセボは、まるで 箱庭空間。
どこまでも 幻想的に佇んでいる。
この広場は駅に組み込んだ
ブランドホテルの中庭で、
ガセボやベルも、
ウェディングに使える仕様。
女子なら
夢みる空間なはずなのに、
シオンには
祖父の思い出と
昼に見た市場を思い出して
切なくなってしまう。
だからまた、フォークに巻いた
パスタを口に入れる。
「うん!美味しいっ!」
何でもないフリをして
パスタを飲み込んだシオンは、
鞄を開けて、
電話の着信と留守電を
知らせる点滅が付いているのを
見つけた。
「あれ?全然気が付かなかった」
シオンは
電話の留守電内容を
文字表示させて、目を見張る。
そのまま
テーブルに電話をパタリと置いて
指を組むと、
光るガセボを見つめた。
電話には、
『令嬢マイケルが消息不明』
と、状況を伝える内容が留守電の
表示にされ状況が
延々と続いていた。
これは、上司に、
『ギャラリスト探偵』の異名を持つ
自分の雇い主に
折り返して連絡をしなくてはと
シオンは、
優しい苦味の珈琲を
飲み干した。
★ さいけ みか です。
『めざせ転移門第2章』を
読み初めて頂き、
有り難うございます。
これまでも作品を読んで下さる
方々には お分かりの事でしょうが
わたしの作品は殆どが連作に
なっております。
なんらかのストーリー複線を
他の作品で書いていたり、
登場人物の1人が
他の作品では主人公になって
いたりとしています。
この2章からでも読める様に
書きますが、
まだの方は 1章もどうぞ。
そして、読まれた方々は、
この2章、始まりは既に別で
読まれていると思いますが、
お付き合いくださいませ。
そして、
いつも読んで下さり
ありがとうございます。
波しぶきかかる
不動岩。
最近の検証によれば、
これまで
大師が悟りを得たとされた
御厨人窟は、
その時代
海の中だったと判明した。
と、ようやく発表されたのは
最近の事。
「やれやれ。人使いの荒い
令嬢じゃわいなぁ。行くかの」
今、大師は
令嬢マイケルを調整国に
送り出してきたばかり。
マイケルから
元世界への手紙を託され、
それを運ぶ途中。
遍路笠を頭に深く被り
金剛杖を手に、白装束姿で
大師は
海沿いの道を歩く。
**.***.チリンーン、
**.***. チリン…
「迷故三界城っ、悟故十方空、
何処有南北っ、本来無東西 、」
迷うが故に
世界は
閉じられた城で
本当は
東も西もなく
どこに南北があるのか
世界は 空 で
この世は限りなく自由
全ては 空 だ
その 空 を求めて
岬で修行する大師は、
己の口に
『明けの明星』が
飛び込んでくるという奇跡
体験をしたと伝説される。
その時見た
空 と 海
二色のみの 眼前の景色に
感銘を受け、
彼の大師は己れを
空海
としたのだと。
**.***.チリンーン、
**.***. チリン…
**.***.チリンーン、
**.***. チリン…
**.***.キーンン
**.***.カーンン**.
「おや? 鐘石がなっておるの。
珍しく、どうやら 例の場所で
軸を定めたか。よく鳴って、、
おお、そうか。
マイケルの手紙が共鳴しおって
か?なに、すぐに 戻るよ。
ほんの、6年が間じゃ。些末よ」
大師は、
胸に仕舞ったマイケルからの
手紙を、白装束の上から
撫でると、
持鈴を返事に、鳴らした
***.コーンーン
**.***. …
**.***.チリンーン、
**.***. チリン…
『キーーーンコオーーーンカラーーーンコローーーンキーーーンコーーーンカラーーーン ..』
「それでは諸君、先週のお復習で
ありますが、旧カフカス王領
国変革の6年の末年に起きた、
旧ウーリュウ藩島史実について
時系列を回線盤に表示します 」
そう手元の回線盤を示唆され
生徒達は
『ブーーーーーン』と
一斉に自分の光る回線盤を
空中に出現させる。
比較的裕福な身なりの子息子女達
その前で、巨大な魔電子板に
カフカス王領国の地図が
写し出された。
子息子女達の手元で光る
回線盤には、年表が表示される。
教師は地図の前に立ち、
自動拡声をするイヤホンONを
手で合図した。
すり鉢状に席が段々に並ぶ講堂の
真ん中で講義を聞く
子女マーシャも、
教師の言うとおりにしながら
ボンヤリと 講義を聞いていく。
「このように 大陸にある他国と違
い、カフカス王領国が長きに渡
り全国民が魔力を保持する国家
でありながらも、蹂躙される事
なく平和的な他人種混合とい
う稀有な存在として、自由 独立
国家と、有り続けれましたの
は、この我が旧ウーリュウ藩島
が、カフカス王領国唯一の
出島として、 堅固なる関所、
ゲートと機能してきた姿が
多大なる意味を持つと、述懐し
てきたわけであります。で、」
巨大電子板の地図の一ヵ所に
ポインターが点滅した。
かつて、旧ウーリュウ藩島が位置
したと印される。
ふとマーシャは
余りの天気の良さに
講堂に燦々と降り注ぐ太陽の光を見上げた。
広い白亜の講堂は、天井が
透明ガラスのドーム状に
なっている為、白い放射線の梁間
から、青い空が見える。
その明るい空の向こうには、
機体を太陽にキラキラと
照らされた
小型空戦艦が煌めいていた。
「その旧ウーリュウ藩島が大きく
その姿を変革させたのが、
16年前に起きた次元津波による
史実、 『旧ウーリュウ藩島離陸
の夜明け』で、あったことは
カフカス王帝領国民誰もが知っ
ている事でありますが、、、」
子女マーシャにとって、教師が
講義する内容は、子どもの頃より
寝物語として母親に
聞かされた話で、
大して目新しさは無い。
他の子息子女も同様だろう。
「それにより、旧ウーリュウ藩島
には次元磁場が引き起こす異常
現象が発生したわけで。回線盤に
先週講義した、その諸々を表示
しておるので、もう一度確認を
しておくと、良いでしょうな。」
講堂の前に浮かんだ
巨大電子板には、海に浮かぶ
旧ウーリュウ藩島のホォログラフ
が写し出され、
マーシャの手元にある
回線盤には、
異常に潮が引いて海底が露な
画像や、空から異世界の島が
落ちてくる画像などが
次々と表示される。
「それらの異常事態が発生する中
旧ウーリュウ藩島を守護する
地空結界が行使されたわけです
が、その結界魔力と、次元津波に
よる空間磁場が膨大なエネルギー
摩擦をお起こし一瞬の磁魔力溶炉
状態を引き起こした。とは、
後年の研究による発表であり、
真実は定かではないが、私の講義
は、史実を教授する時間であるの
で、そちらは別の教師に聞いて
頂きたい。よって、その結果
旧ウーリュウ藩島は、虚空に
浮遊を開始したのであります」
それから、16年。
旧ウーリュウ藩島は、
カフカス王帝領国衛星島となり、
別名、カフカススカイゲートと
呼ばれている。
ひと度虚空へと居住を移した
藩島民の進歩は目覚ましく、
一気に虚空を走る空母艦を
開発。
空を飛ぶ翼竜部隊の支基地として
運用している。
それらの開発に貢献している
のが、旧ウーリュウ藩島王弟将軍
が息子、現ウーリュウ衛星島が
皇子であるが、
この皇子の驚くべき要素は
その開発の才能や、
成人を迎えるまだうら若き
王皇子らしくない美貌よりも
断トツに抜きん出る要素が
ある。
「しかし、それ以上に摩訶不思議
なる奇跡が起きていた事を、
史実は物語っております。そう
諸君も充分に存じておることと
理解しておりますが、講義として
敢えて口述致しましょう。」
浮遊する巨大電子板には、
マーシャが翼竜に乗るとよく見る
空に浮かぶウーリュウ衛星島が
ホォログラフされる。
そして、手元の回線盤上に
王帝弟将軍の立身が表示された。
「旧ウーリュウ藩島が虚空へ
離陸して後、
王弟将軍が自ら懐妊され
皇子を出産されるという
奇跡がさらに起こったのです」
マーシャの回線盤には、
よく知る 白銀の髪を持つ美少年が
写し出された。
この学園に通う子息子女で
彼の顔を知らない者など
居ないだろう、その顔を見て
マーシャは
ため息をついた。
カフカス王帝領国旧ウーリュウ藩島で、現カフカス衛星島
スカイゲートの主、
王帝弟将軍は、間違いなく男性。
にもかかわらず、
浮遊した王城内で男児を、
身ごもった。
当時は余りの出来事に内密にする
政策も考えられたらしいが、
王帝弟将軍は奇跡の力により
神の子を
その身に受けたと大々的に
公表された。
そして、その麗しの皇子は
マーシャの婚約者であって、
生まれながらに国民全員が
魔力を持つという
カフカス王帝領国において、
全くの
魔力無し王子でもある。
それは、ごく一部の者だけが知る
事実であり、
皇子の魔力無しの性質は、
彼の母親と同じだという事も
ほんの一握りの王族しか
知らない。
「翼竜に、乗りたいなあー」
マーシャは
天井から見える青い空を
見つめて 呟いた。
『キーーーンコオーーーンカラーーーンコローーーンキーーーンコーーーンカラーーーン ..』
『ガラーーーンガラーーーンガラ
**.***.キーンン
この鐘って、何だっけ?
迷うが故に
世界は
閉じられた城で
ーーーンガラーーーンガラーーー
**.***.カーンン
本当は
東も西もなく
どこに南北があるのか
ンガラーーーンガラーーーン ..
**.***.コーンーン
**.***. …
世界は 空 で
この世は限りなく自由で
全ては 空 なのだ
けど
「って、、、、、、、
あたしを拉致った大師なる
マスターが言っていたような」
、、、
マイケルは、
遍路装束のまま
白い砂浜で、波に洗われていた。
見上げる空には
鳥らしきものが飛んでいる。
海鳥だろうかと、
覚醒したマイケルは
ボンヤリ考える。
「んー
ここは、?」
オヘンロしてて、急に変な
ラボに来てて、
そこに居た『隠士』に
今度は異世界に飛ばされるって
言われたけど、、、
それって、
「另一个世界之旅てかあ、、」
遍路装束のまま
華僑の令嬢マイケルは
砂浜に寝ていて、
寄せては返す波に
腰まで洗われている。
ずぶ濡れ。
「でも、寒くない。」
冬の山中にある小さな洞窟。
双子のボディガードを
外に待たせて
中に入った記憶から考える。
「ここ冬天、、じゃないんだ。」
そこに漆黒色の瞳が
リョコッと
マイケルがみる空の景色に
差し込まれた。
「巡礼しゃ さん、いきてる?」
昼の白い空を仰ぐみたいに
横たわるマイケルの視界に
突然現れた
幼女が、続けてマイケルに
聞いてくる。
「しんでる?」
覆い被さる、クリンクリンの
牧場色した巻き毛。
その顔はあどけない顔少女。
マイケルは
涅槃像の如く姿勢のままで
幼女に答えた。
「生きてる。」
何?!この可愛い生き物!!
しかも言語が通じるって
補正付き?!
「生きて、ます。」
そう応答して
マイケルは、
この調整世界で初めて出会った
可愛い異世界人に
何故か、ほっと息をついた。
「巡礼しゃさん、おきる?」
幼女は、掛けた前歯をニコッと
見せて、小さな
その手を差しだし
マイケルの手を引こうとする。
「ありがとうね。」
マイケルは、その出された
幼女の手を掴んで感触に
一瞬怯んだ。
痩せた、手。
上体を起こすと、
向き合う形になった幼女の体を、
マイケルは改めて
よく観察する。
「?巡礼しゃさんこわかった?」
幼年期どくとくの 舌足らずな
しゃべり方に、
ボロボロの服。
マイケルが、考えるに4、5才。
そんな
相手に、何故か
「怖かっ、た。怖、い。」
今
否応なしに
受けて入れてしまっている
異世界への放置プレイな状況に
つい感情の片鱗が
知らない幼女相手に、
流れ出てしまった。
「、、わたしヤオ!」
なのに、
幼女は突然、可愛らしい笑顔を
満面に見せて
挨拶してくれた。
「はじめまして、ヤオ、、
わたしはマイケルっていいます」
あー、この子、
人の感情に敏感なんだ、、
そーゆー子は得てして
家とかの何かで
人の仕草とか、過敏なんだよ、
「あと、、ありがと、ね」
マイケルは
古く煤けた幼女の服からも
相手の状況に『当たり』を
つけた。
そして、波で濡れた髪を
手で絞りながら
「ヤオ、わたしはここで少し暮ら
したいの。どうしたらいい?」
元世界では、幼女にこんな
情報を聞く事は
無謀なところ。
それでも幼女の手から、
幼いながらも生きる術を
模索している
様子を汲み取って
質問を投げかけた。
「巡礼しゃさんのギルドある。
10ウーリーいる。ある?」
思った通り、
幼女はなんの躊躇いも無く
マイケルが欲しい情報を
与えてくれたのだ。
「10ウーリーがいるのね、、
ウーリーは持ってないの。
どうしよう。困ったな、、」
今の会話で
マイケルは、
この世界、もしくは国の
金銭単位らしきものが
『ウーリー』なるモノだと
理解した。
「10ウーリーって、、
ヤオは、いつも1ウーリーで
何か買ったり、かえっことか
したこと、って、あるのかな」
マイケルは、
相変わらず浜辺に座ったまま、
幼女の目線に顔を合わせて
聞いてみる。
「うー、ヤオ、ウーリーない。」
「 マモ、もぐってキラキラの
石とって、ギルド行く!」
「ウーリーで、ぱおん
かうのヤオに くれる!!」
辛抱つよく、
幼女が一生懸命に話すのを
聞いたマイケルは
「もぐる!」
幼女の言葉に 1つ食い付いた。
「ヤオ、『マモ』って男の子?
マモは、この海にもぐるの?」
「うん!マモ、ちっちゃい
にいちゃん!とべるの!でも
もぐる力ないから、そこに
もぐるのー!ヤオてつだうの」
紡ぎ出される幼女の言葉に、
マイケルの瞳がキラリと
光る。
「ヤオ、良かったら、手伝って
くれるかな?上手くいったら
ぱおん?あげれるかもだよ。」
とぶ←飛ぶってことだよね?
もぐる力、、なにか能力を持つ
世界って事かも。
ちっちゃいにーちゃん。ね。
大きくて、学校行ってるぐらい
までの男子が
普通の泳ぎで、潜れるのは
知れてる。
この海に何か資源になる
モノが
割とあって、
子ども達が 小遣い稼ぎが
出来るって事か、、
潜ってみないと
わかんないけど、土着民族の
カンは侮れないから、
小さくってもヤオに
付き合ってもらうのが
いいよね。
「どうかな?」
まずは、今日をしのぐ!
特別な力なんて、ない。
言葉はどうやら
補正が入ってるみたいだけど、
文字は
どうかわからない。
それでも、体に叩き込んだ
護身術と、身体能力は
使えるはず。
「いやかな?」
マイケルが、
幼女に微笑みかけると、
彼女はまた、満面の笑みを
パッと開いて
「巡礼しゃマイケーさん、
もぐれるの?ヤオてつだう!」
ガリガリの手をたたいて
マイケルに応じたから、
マイケルも笑顔を返す。
可愛らしい。
「巡礼者、、朝圣、ヘンロ、
カミーノ。この世界にも、
そーゆーの、あるんだ。」
なにやらはしゃぐ
幼女の姿に癒されながら
マイケルはゆっくりと
立ち上がった。
『ザー』
波を含んだ遍路装束から
水気が落ちる。
どうやらこの異世界は、
マイケルの世界と
同じく巡礼者を迎える
習わしがあるらしい。
それをギルドが管理している
なら、かなり盛んな文化
なのだろうと、
うつらうつらマイケルは
頭に描きながら
服の水気も絞って散らす。
髪はさっき絞った為すぐに
乾いたから、乾燥系の気候。
どこか、
そう 地中海を思わせる。
「巡礼しゃマイケーさん!
もーすぐ、水がさがるよ!」
幼女が、漆黒の瞳を輝かせて
マイケルに海を促した。
「そっか!引き潮!奥まで
歩けるんだね!ヤオ凄い!」
ああ
この少女は、本当に良い子で、
あたしは 急な異世界放置だけど
ラッキーだなー。
って、今、思ったよ!!
ヤオ、海洋民族の子どもか?!
「ヤオ、わたし特別な力ないの。
でも、泳ぎは得意よ。なんて
いっても楊一族のお嬢様よ!
大抵の事はサイコウに出来る!」
マイケルは、
絞った遍路装束を
脱ぎ捨て、近くの岩へ拡げる。
そして、
オールシーズン対応の
スポーツインナー姿になった。
「ヤオ、潜る場所、マモは
いつも何処にいくのかな?
出来たら、マモより、いい
ものGETしたいよね!どう!」
マイケルが、ヤオに親指を
立ててポーズをすると、
目をまん丸にして
マイケルの勢いに 驚いた。
「あたしが 潜って、ウーリーを
稼いだら、ヤオとわけよう!
そしたら、ヤオの服も買える」
あたしは、老華人・楊の令嬢!!
今でこそ華僑は、
財閥やIT企業グループの巨大
政財一族になっているけど、
その歴史は
海を渡り世界の港から
職人や商いで成り上がったんだ
もん!!
モノを持たざれば、
世界中の港で通訳や案内を
してまで一代を築いたんだ!
この身体1つでまずは
今日をしのぐ!
凌ぎを稼ぐ!!
「ヤオ、潜れる場所、わかる?」
まだあっけにとられるヤオに
マイケルが、海に顎でシャクって
促せば
「しってる。ある!」
と、ヤオが波打ち際を走って
指を差す。
「よしっ!!行くよ!ヤオ!」
マイケルの声に、
ヤオが牧場色の巻き毛を揺らして
振り向いた。
もう海は、干潮になっている。
このウーリューウ藩島海域は
神殿を中心とする
海底遺構が沈んでいるのを
マイケルはまだ知らない。
それでも
「全ては、この海からだよ!」
マイケルは、砂浜の遍路装束から
金剛杖を拾って、
空を、突き
仁王立ちになった。
「いざトレジャーハンターへ!」
華僑の血が騒ぐ、
異世界の海へ。
『 Oooon Ooun Ooooon Ouoon゜゜
゜ Oooon Ooun Ooooon ゜゜ ゜ ゜ ゜ ゜ 』
゜ ゜
゜ ゜
海をもぐる。
マイケルはシュノーケルも
水中眼鏡さえない海を
素潜りで降りていく。
潜りながらマイケルはふと
「この海、あったかい。」
と思った。
゜ ゜ ゜ ゜ 』
゜ ゜
『゜ ゜
ルムジル。素潜り。
韓流ドラマで有名な島は
チャルムの島だ。
かの国の華僑は在韓華人で
海を渡ってがルーツ。
かの島はリゾートとして
華僑投資がとくに
進んでいる。
そして
海女は、
この島の人類文化遺産だ。
他地域なら
男性が潜る海士もいるが、
本来は耐えられないという。
皮下脂肪の薄さが
呼吸の長さが
水圧と
海水温に影響される
゜ ゜ ゜ ゜ 』
゜ ゜
゜ ゜
「せいぜい、3、4メートル。
良くて5メートルぐらいかな」
プロなら10メートルは越して、
カリスマなら30メートルを
スムビソリ、磯笛の呼吸でもって
冷たい海を
潜る。
アジアの海を流れる
黒潮の暖流は
赤道の熱を
海に運ぶ。
素潜り漁は黒潮の恩恵にある。
そんな事を頭に浮かべるのは
潜るほどに、この異世界の海が
全く予想外だから。
『゜ ゜ ゜ ゜ 』
゜ ゜
゜ ゜
゜ ゜ ゜ ゜
゜ ゜
゜ ゜
マイケルが
恋愛のお遍路を
双子のボディーガードを連れて
歩いていた道は、
毎年滑落して、
ヘリ救助されるという
難所で
マイケル達は、
それでも
聖と俗の境界と言われる山中を
緊張しながら、雪の中
3人で進んでいた。
滑るからと
マイケルが双子に
声を掛けられた時
それは
突然だった、
と、思う。
『Oooon Ooun Ooooon Ouoon゜゜
゜ Oooon Ooun Ooooon』
「ねぇ、何?この音?向こうから
聴こえるけど、誰か遭難?」
マイケルが見ると
正規のルートから脇に、
横道が伸び、
音がする。
狭き道を進むと出てきた。洞窟。
覗くと
大師の像がある、、
「狭いけど誰か出れないとか?」
難所も越えて、
マイケルが 地図を思えば
林道も近く危険でもない。
「ちょっと、中を、みるわ。
狭いから
2人は、 待っててちょうだい」
マイケルは指示をして
音がした 洞窟の祠に入った。
あるのは野趣溢れる
大師の石像だけ。
「気のせいか、、
なら、この大師像にも真言を
唱えて、出ますか。えっと、」
マイケルは、
目を瞑り、
息を整え 真言を唱える。
法螺貝の 合図と、
白銀の雪に代わる
迷故三界城、
悟故十方空、
何処有南北、
本来無東西 、
何か気配を感じてすぐに
マイケルは
目を開いた。
「誰!!」
目の前には
石の大師像ではなく、
生身の『大師っぽい』人物が立ち
洞ではなく
黒い空間に 自分は
佇んでいた。
「おぬしなぁ、どれだけ お嬢様
なんじゃ?恋愛の為に 遍路を
廻るなんぞよぉ。わからんなぁ。
護衛を2人も付けてなぁ。
おぬしと2人で話する場所の
選定にどれだけ難儀したか。」
突然
マイケルの前現れた大師は、
胡座姿のまま空中に
浮かんでいる。
「なんじゃ?おぬしのその顔。
傑作じゃっなぁ。ふぉっ!!」
大師は白顎髭をしごき 納めた。
呆気にとられる内に
「闇の廊下?。ここ、、」
そう 思って
マイケルは ふいっと
前にも後ろにも続く空間を
確認する。
空中から足を伸ばして
大師は歩き出した。
音もなく進む黒い中、
両側に只、木製のアーチ扉が
並ぶ場所。
その扉の1つが 勝手に開いて、
大師がそこを潜ってしまう。
「置いてかれたら、まずいね」
マイケルも、そのまま
急いで大師に付いて
扉の中に入ると、
勝手に扉は閉じた。
キョロキョロして、
部屋の中を見回す。
部屋中は 広くどこか、
ラボのような作りで、
ボンヤリと
夜行虫灯りが 虹色に点いている。
中央には、
ラボとは 合わない
アンティークの円卓に、
円形古地図が
マッピングみたいに立体投影
され、
よく見ると 中は半透明で
精密な
ジオラマになっていた。
「残念じゃが、おぬしにして
もらう世界は、おぬしの住まう
次元世界じゃない。
異次元や異世界とを、おぬし達の
次元世界につなぐ 調整世界じゃ」
ボンヤリする
マイケルを 気の毒な
視線で諭す大師。
この空間は ラボで
全ての世界を投影する事が
可能な設定だと大師はいう。
それが故に、
「でもなぁ ほんに、
わしも 驚いた。まさか、わしの
遍路姿を視るモノが 外の国から
来ていた旅行者じゃったんじゃ」
では、始めようぞと 大師は
何かを描いていく、
「おぬしを 器に入れて、
調整世界へ。健闘を祈る。」
※~※゜※Oṃ vajraratna,~**゜”~
゛Oṃ trāḥ svāhā※*~”
大師の詠唱に 呼応して
**※~Namo Ākāśagarbhāya~Oṃ ~*ali kalmali mauli svāhā~**゜
『始まりの時間軸 を
※~※゜※Oṃ vajraratna,~**゜”~
゛Oṃ trāḥ svāhā※*~”
己が 首を、恋する相手の刃で
**※~Namo Ākāśagarbhāya~Oṃ ~*ali kalmali mauli svāhā~**゜
掻き斬る乙女よ 其処に、 』
『Oooon Ooun Ooooon Ouoon゜゜
゜ Oooon Ooun Ooooon ゜゜ ゜ ゜ ゜ ゜ 』
゜ ゜
そして彼は、空中に胡座をかくと
最後の印を結んで
身動ぎもせず、
大師を見るマイケルに、
「時きたり。」
と囁いた。
一言伝えて大師は霧散する
ゆっくり
ゆっくりと周りに思考の霧が
霞がかり、
狂いそうだっ。
..
Oooon Ooun Ooooon Ouoon゜゜
゜ Oooon Ooun Ooooon ゜゜ ゜ ゜ ゜ ゜ 』
゜ ゜
゜ ゜
霞みに消えて
行くべき世界へ
転送されていく そんな
始まりだった
゜ ゜ ゜ ゜
゜ ゜
゜ ゜元の世界に。
戻れるのかな 。
あたしはこの世界で、
生きていけるかな 。
。
ねぇ? 。
゜゜
゜ ゜゜ ゜ ゜ ゜ ゜
゜ ゜
゜ ゜
「この世界の海って、明るくて
暖かくて、、、
海の中に、城市が沈んでる、」
マイケルは 奥に光るモノを
見つけるが、
息が続かず
海面に
そのまま浮上した。
カフカス王領衛星島こと、
スカイゲートは、
この時期になると
下界へ降りて門となる。
『キーーーンコオーーーンカラーーーンコローーーンキーーーンコーーーンカラーーーン ..』
「マーシャ!!
今日も海に行かれるの?!
おやめなさいな!貴女
婚約者様に、相手に
されてないんでしょ!!あ、」
マーシャが黒い纏め髪を
揺らして講義室を走り出ようと
するのを、クラスメイトが声を
かける。
「ありがとう!でもね、この時期
しかスカイゲートは海がないんだ
から、見に行きたいだけよ!」
今日のマーシャは
午前中で講義が終わるから、
制服姿でも
そのまま海沿いにある
ギルドまで
飛行魔力で飛ぶつもりだ。
「貴女ね!淑女なのだから
インナーパンツだけは
お履きなさいませーー!!」
続けて小姑みたいな言葉を
クラスメイトは叫んでいるのを
「わかってるー!」と
マーシャは聞き流して、
紺ローブを取り出すと
纏いながら
講義室の出口から飛びたった。
「あー、もうすっかり潮が
引いてるー。 不機嫌皇子 は何処
かしら、、、、うん。いた!」
上空に舞い上がり、
いつもより遥かに近く見える
眼下の海に遠視すれば
海底に降りる白銀の髪が
煌めいた。
「相変わらず、魔充石を使わない
で、潜ってるのね。ほんと、」
マザコンなんだから。
そう呟いて
マーシャはギルドの前で
飛行を止めると、途中から歩いて
敷地に入る。
「あ、マスター・ラジ!
バレちゃいましたか。ご機嫌
は如何でしょうか?英雄様。」
ちらほら白髪が混じる
鬣の様な髪を後ろ流して、
かつての英雄は未だ精悍な丈夫
が凛々しく、
いぶし銀の様だ。
そんな男闘呼に
マーシャは 上流貴族子女らしく
制服にローブ姿で
カーテシーする。
「マスター・ラジには敵いません
ですね。気配だけで、飛行する
わたしを見つけてしまうんです
もの。
とても、盲目とは思えません」
纏うオーラに軽い覇気を含ませて
はいるが、
『ギルドの長ラジ』の目は
かつての瞳の耀きは閉じられ
盲しいていた。
「また来たのかマーシャ。なら、
アイツも潜ってるという事か。
島が降りる度に、素潜りをして
鍛えるとは、いらぬ事を
我も話してしまったものだ。」
ラジはそう呟いて、
縦に無数の傷が入る両の瞼を
海へ向けて、
ふと
今度は徐に王都の空へ
視線を定めた。
マーシャは、
そんなラジの横顔を見つめながら
答える。
「ガルゥヲン皇子は、母さまを
お探しなのでしょ。いるはず
のない海でしょうがね、、」
マーシャの言葉にラジが
閉じた瞼で
視線を投げる。
16年前に起きた
次元津波という災害から
かつて旧ウーリュウ藩島、
今のスカイゲートを
護る為に、
英雄は磁場嵐に
その身を穿たれたと聞いている。
普通の人間ならば、内臓までも
蜂の巣になる磁場雨の中、
英雄は身体強化でもって役を
成し遂げたが、
その際
唯一、瞼と眼球は強化叶わず
眼球は 弾けてしまった。
「アイツの母親は、潜水能力を
研ぎ澄ませ、魔力が無くとも、
独特の呼吸法で10メール潜っ
た。日に何度。大した女傑だ」
マーシャは黒い瞳を見張る。
「そんなに!今どき子どもでも
魔充石を使う世の中ですよ!」
「あらやだ、その魔充石を見つけ
たのもルゥのお母さんなのに」
楽しげな声を立てて、
皇子の偽名を口に
バスケットを片手にぶら下げ
やってきたのは
ギルドの若女将ロミで、
「はい!マーシャちゃん!
お弁当のサンドウイッチ。
毎日、マーシャも懲りないわね
差し入れして、ルゥの気を
惹こうなんて、可愛じゃない」
ラジと佇むマーシャに、
バスケットを差し出した。
「お義父さん、副長とヤケラが
今戻ってきましたわ。お義母さ
んは、まだ王都に残っている
みたいで、もう少しお仕事
されてから帰るそうですわ。」
そういって若女将ロミは
ラジに、
「まあ、2人の気配は
もう、お義父さんも解っ
てらっしゃいますよね。」
笑った。
どうやらギルドの副長と若長は
スカイゲートが
下界に降りて早々に王都へ
出向いていたらしい。
俄にギルドの建物が騒がしくなる
と、件の2人がラジの元へ
足早にやって来た。
「ラジ~、戻ったぞ~!!」
「父さん、戻りました。あれ、
マーシャじゃないか。あぁ、
ルゥがまた、海に出たのか。」
ギルドの長・ラジの右腕と
いわれる割には、
相変わらず調子が軽めの
副長レサが
マーシャの頭をわしゃっとすると
片眼鏡が光った。
「お帰りなさい、レサさん
ヤケラさん。レサさん、頭を
ぐちゃぐちゃにするのやめて
下さいね!子どもじゃないの」
マーシャが口を尖らせると
副長レサは肩をすぼめる。
「あぁ?そ~いや、マーシャも
成人の儀かぁ?お!なら、
お前さん、本格的にルゥの嫁
さんになる用意すんだなぁ。」
いつまでも、ケツの青い
おこちゃまじゃないんだなぁ!と
レサはマーシャの肩を叩く。
「やめてあげなよ、パパ!
デリカシーなさすぎ!マーシャ
ごめんね?うちのパパが1番
精神年齢は子どもだから。」
若女将のロミが副長レサの脇を
小突いた。
「それにしても、ルゥも飽きない
なぁ。下界に降りる度に素潜り
だろ?いくら影がいるからって
供も付けずにだもんな。」
若長ヤケラが目の前の海に
目を向けた。
「ありゃな、いくら父親から
生まれたっつっても、中身は
母親似だな。外身は父親に
そっくりでもだ。間違いねぇ」
副長レサはそう言って
自分の顎髭を撫でる。
「レサ、覚えているか。アイツの
母親が初めてギルドに来た事を」
徐にラジ長が、口を開くと、
「レサ義父も、いたんだ!
そういえば聞いた事なかったな」
「ラジぃなんだよぁ 覚えてるに決
まってらい!ヤケラ!お義父さ
まはギルドの生き字引だぞ!」
マーシャは副長レサが、
そうして胸を張る姿に笑う。
「ルゥのお母さんって、そんなに
凄い人なんですか。なんだか、
魔力が無くても超人ですね。」
「おいおい!マーシャ!ルゥの
母親は、ありとあらゆる革命を
起こした女なんだぞ。そうだ、
初めてギルドに来た時から、
規格外な奴だったぜ、なあ!」
レサ副長がラジ長に目配せを
すれば、ラジ長がゆっくり
頷いた。
「あの日、初めて彼女がギルドに
持ち込んだモノがすでに革命的
だった。いや、いつでも彼女は
我々が捨てるようなモノで変化を
もたらしたようなものだ。」
ラジ長の言葉にマーシャは
頭を傾げる。
「ルゥのお母さんが初めて、
ギルドに売りにきたって?」
レサ副長が、遠い目をして
それに答える。
「デッドツリーコーラル。
枯れ木の珊瑚だよ。」
「フホーーイ、ホーーイ、」
たまっていた二酸化炭素を
一気に吐き出す!!
「やっぱり簡単じゃないか、、」
マイケルはそのまま
海に仰向けになって浮かぶ。
「巡礼しゃ、マイケーしゃん!」
チャバチャバと水音を立てて
クリンクリン巻き毛の
異世界幼女・ヤオが
マイケルに寄ってくる。
「ヤオ!こいつかぁ?巡礼しゃの
マイケルってやつ。女じゃん」
うん?
ヤオ以外に、少年の声がする?
「はじめましてー女のマイケル
ですーあなた、マモでしょー」
浮いていたマイケルは
叫びながら、
泳いで、ヤオの所へ向かう。
ここは引き潮で現れた
海底遺構の城下町と思える場所。
ヤオに案内されながら
マイケルは浅くなった沖でも、
急に深くなる部分に潜った。
ヤオに、ここにいつもマモと
来るからと
教えられたからだ。
「あんた、潜れるんだな!
だったらもっと沖に行けば
いいぜ!ここより、デカイ
ハントできるからさっ!!」
見ると、サラサラボブヘアの
ライトブラウンに赤の瞳を
した少年がいる。
「え!赤の目って!異世界って
すごいなぁ。ヤオ見てると、
全然気がつかなかったよ。」
そう言ってマイケルが眼を
見開く。ヤオはマイケルと同じ
黒髪に黒の瞳だ。
「今日みたいな日は、アンバーも
出ないんだよ。だから沖だな」
「ん?マモ、『アンバー』って
言った?アンバーって、石だよ
ね?飴色したやつでしょ?」
つい、マモの頭やヤオの頭を
撫でそうになる手を止めて
マイケルはマモに確かめる。
「そうだよ!玉石で、嵐になると
出てくるから、オレでも嵐の
あとは潜ると、とれるだぜ!
太陽に当てると青く光って
キレイなやつは、ギルドで
ウーリーが倍もらえんだ!!」
マモは、ヤオより
大分年上だろう体を威張らせた。
「青く、光る、、もしかして
ブルーアンバーが出る!!」
しかも、嵐の浅海にって
ここはバルト海かい?!!
それも
インドネシアの島でとれる様な
希少なブルーアンバー、
青い琥珀だ!
海の透明度はバツグンで、
魚もたくさんいた。
「とんだ、海だわね。ここは、
もう、稼ぐしかないじゃない」
バルト海も昔は浜辺で琥珀を
シャベルで探したって聞いたけど
ラッキースポットだわ!!
「よっしゃーーーーあーー!!」
マイケルが拳を掲げて
雄叫びを上げる。
「いや、だから、嵐もぜんぜん
きてないんだよ。だから、オレ
もハント出来てなくってさ。
潜る力あれば、沖に潜れて、
もっとデカイ像とか、いける」
マモはマイケルの腕を
ひっぱって寂しげに言った。
「あたし、力?魔力?全然ない」
マイケルは事も無げに笑う。
「だって、さっきすごく潜って
たじゃん!!潜る魔力だろ?
それに、あんた髪も目も黒い
じゃんか!って、あれ?あれ」
マモは
急に訳がわからない顔を
してマイケルの目を見上てきた。
「あたし、何の事かわかんないん
だけど、マモ!ちょっと色々
ヤオと一緒に教えてくれない」
闇雲に潜っても体力消耗だ。
さっき光ってたのは
後で潜るとして、
この海底遺構の城下を
知らないとダメだよね。
それに、地形。
海底遺構がこんなにも水中に
あるなら、この島は今も
地盤沈下しているかも。
異常に暖かい海だから、
海の中に火山かガス活動が
あるかも。
「マモ?沖には大物ハントが
出来る場所があるの?」
「昔の神殿とか、街守りの像が
あるんだよ。それが金ピカとか
玉とか付いてて、高くウーリが
もらえんだ。こづかいかせぎで
潜る力あるやつは、まん中で
腕わとか、かざりをみつける」
マモは興奮しながらマイケルに
答えてくれて、可愛い。
「巡礼しゃ、マイケーしゃん!
ここも、光るのんあるよ!」
急にヤオも、興奮してマイケルに
話してくる。
マモの様子が伝染したかに見えて
それも、マイケルには癒しだ。
「わかった、ヤオの言う通り、
まずはさっき光ったのがあった
から取ってくるよ。もしかした
ら、マモの言うアンバーの残り
かもしれない。もし、アンバー
だったら、マモにあげるよ。」
マイケルは、
ビシッと肩親指を立てて
ポーズする。
「本当か!」
「本当。マモには、いろいろ
教えてもらったお礼よ。ヤオは
また潜って考えるから、それで
ウーリをわけようね。大丈夫」
金剛杖を持って
マイケルは深くなっている場所へ
移動する。
ヤオやマモがいるのは、
海底遺構の岩屋根の上になる。
かつての遺構上空には
水路か回路が張り巡らされて
いたのだろう。
その石回路の上を、
引き潮の条件を利用しつつ
つたって沖近くへ来ていた。
「フホーーイ、ホーーイ、」
呼吸を整えて、耳抜き、
マイケルは海へポチャンと入る。
゜゜。
゜ 。。。゜゜。゜゜ ゜ ゜ ゜ ゜ 。。゜゜
゜ ゜。。゜゜。゜゜ ゜ ゜ ゜ ゜ 。。゜゜
゜ ゜
島で高台には
白亜の城が遠くても見えた。
海沿いにギルドがある。
まん中では飾りが見つかる。
街守りの像がいる。
さすが、調整国だと大師が言って
いただけあって、事象や物に
元世界との共通事が多くって
助かるー。
なら、この辺りは貴族街的な
所か、王城に近い役割の場所。
昔は城ももっと大きかったか。
粗方、装飾品は取られた
後だろうけど、、
マイケルはさっきの場所へ潜る。
チカッと光るもの。
どーゆーわけか、アンバーだ。
マモの言うとおり
太陽に当ててみよう。
さあ、一旦海面に。
獲物が、なくても、魚を採ろう。
粗方取り尽くされた場所には、
散乱する白い石や崩れた
遺構。
人骨とか、あったりして。
マモの言うとおり、
いかにもハントするような
物は残ってそうにないだろう。
もっと資源的な物を探す?
自然の海底ならそれも
あるかもしれない、
けどかえって遺跡じゃ、
資源は難しい。
そもそも原油とか使う世界?
石海底炭とか?
海藻地帯なら、ミネラル泥とか?
この散乱してる白い物何?
他にアンバーは無い。
マイケルは試しに散乱物と
見つけた唯一のアンバーを
手に海面を、目指す。
。。゜゜。゜゜ ゜ ゜ ゜ ゜ 。。゜゜
゜。゜。。゜。。゜゜。゜゜ ゜ ゜ ゜ ゜ 。。゜゜
「フホーーイ、ホーーイ、」
二酸化炭素を出す!!
片手のアンバーを太陽にかざす。
「すごい。ブルーアンバーなんて
そうそうお目にかかるもんじゃ
ないはずなのに、あはは!」
マイケルは浮かびながら
笑ってマモやヤオに手を振る。
そして、もう片方の手にある
散乱物。
水中では、わかんないけど
触ってわかった。
これ、、
エンジェルスキン?
枯れ木珊瑚、白?
もしかして、コーラル?なの?
これで海亀がいれば凄くない?
ここって
ワシントンのアレないよね?
異世界だもんね?
真珠種とかあるかな?
海辺にあるという
英雄が長のギルドは
マイケルの予想以上に
建物が大きく、
地中海らしい白壁と
明るい屋根が
海空に映えている。
「この島だけじゃないぞ!
まわりの国ん海、ぜーんぶ
『統べるギルド』だって!
すごいだろ!!海じゃいちばん
で、ラジさんはかっこいいぞ」
マモが道すがら
マイケルに教えていた為
多少
理解していたが、ギルドは
それでも圧巻の建物だった。
周りはふっつーに
地中海リゾートアイランド
だけどねっ!!
「巡礼しゃ、マイケーさん
あそ!あそこ!ラジさんギルド」
トタトタと海沿いの道を
ちっちゃいヤオが、
クリンクリン巻き毛を揺らして
先頭を歩く。
後ろにマモが マイケルの
獲物?を担いでいる。
マイケルは、金剛杖に遍路笠を
籠に引っかけて、
続いて並ぶ。
「ヤオ!転ぶぞ!」
ヤオは
少し歩く度に、何が嬉しいのか
マイケルに振り返り
振り返り、
ニカッと 掛けた前歯で笑う。
「ヤオ!ちゃんと着いていくから
転ばないように、前見てね。」
ヤオ、クリクリのトテトテが
可愛いー!
マモも、お兄さんぶってるのが
また愛いやつだよー。
「マモ、ありがとうね。持って
もらって、悪いね。助かった」
マイケルはマモの肩を
指差して、ご機嫌に礼を言う。
「いいよ!どうせ、もぐれない
から。それにさ、
巡礼しゃマイケーには、アンバ
ーもらったから。安いって!」
マモは、
気になっていたように
マイケルに、
自分の肩のモノを顎でしゃくる。
「なあ、ほんとにコレもってく
の?、笠のも、ぜってー、
骨だぜ。ひとの骨なんか
ゴロゴロしてるから、
ウーリになんねーぜ。この
きたない枝も、ほそいから
薪にもなんないし、へんだな」
口を尖らせる。
「まあ、いいのよ。どれぐらいの
ウーリになるか、試したいし」
マモの愚痴を気にもせず、
ねっ!っとマイケルが
マモに
ウインクをした。
マモはそんなマイケルに
キョトンとして、顔を赤くする。
「マイケーさん!はいる!」
ヤオが慣れた足どりで、
観音開きに放たれた
背の高い木製ドアに入っていく。
入れば、
高い天井にクラシカルウッドの
マリーナ内装。
いくつも
トルコランプみたいな照明が
下がって、真ん中には
アンティークな円柱の水槽が
珍しく生き物を
美しく見せている。
それでいて
大きなスチームパンクな銀行
みたいだ。
「うあーー。ゲームみたいだね。
ギルドって感じー。凄いね!」
マイケルが思わず
声をあげる。
そんな声さえも
かき消えるぐらいギルドは
巡礼スタイルの人々。
ちょうどハントから帰った
でだろういかにも冒険者。
職人みたいな集団に、
商人や漁師、魔法使い?
西洋の船乗りがと、
活気に溢れていた。
「ウォール街と同じ薫いがする」
物流、産業、金融。
ギルドは マイケルが見ても
賑わっていた。
「さき、登録だよ、こっち!」
マモが、小さいヤオの手を
繋いで
端にあるカウンターで
マイケルに手を振る。
巡礼者は後払いでギルドに登録
出来ると言われて、
マイケルは直ぐに登録をした。
そのかわり10ウーリを払わないと
ギルドにある巡礼者ベッドには
寝れない。
それでも、この島のギルドは
どこも
巡礼者を広く迎えていると、
小麦色に日焼けした
カウンター嬢に説明されて、
それには
マイケルは感心した。
「本当、今日は野宿だろって
思ってたから。謝謝だよー。」
ニンマリと笑ってマイケルは
ヤオとマモの頭をワシャっと
撫でる。
「わ!って、マイケー。ウーリ
ないのにどーすんだよ!」
ヤオは、もふもふと
マイケルに
撫でられているが、
マモはマイケルを下から睨む。
「この獲物達を、ウーリにするよ
お姉さん!見てくれるかな?」
小麦色カウンター嬢は、
「鑑定は、あちら~☆」
水槽の向こう側のカウンターを
示した。
アンティークな水槽の周りを
螺旋階段が取り巻き、
まるで水槽を囲む様に、
円形にカウンターが取り巻く。
ちょうど登録カウンターの
反対側が鑑定のブースだと
小麦色嬢が案内するのを
マモが、
「ほんとに、骨、だすんだな!」
と、マイケルとヤオの手を
引っ張った。
「大丈夫よー。そりゃ、
どれぐらいのウーリになるか
わかんないけどさ!ほら、」
マイケルがマモに教えたのは
真ん中の水槽の中。
「生えてる生木は 初めてだわ」
マイケルが呟いた視線の先には
水槽底に
目も覚めるかの、
鮮やかな
血管の如く揺れる
何本かの赤木。
「しかも、オックスブラッド。
『トサ』並みの生木、、」
マイケルが爛々とした目を
水槽に向けていると、
ブースに1人、双眼鏡みたいな
眼鏡を頭に乗せた男が
「いらっしゃいませ巡礼者さま。
本日の鑑定品は、どちらで?」
マイケル達に声をかけて来た。
マイケルは、金剛杖に
ひっかけた遍路笠の中を
ブースデスクにひっくり返す。
「まずは、これを視てよ。
デッド・ツリー・コーラル。
白珊瑚の枯れ木。扱ってる?」
バラバラと出したのは、
マモがさっきから骨だと、
文句を言う白い棒の代物。
でも、マイケルは自信がある。
「デッドツリーコーラル?なんだ
そんなもの聞いた事がない。
そもそも、コーラルに白が
あるのか?デッドって、
死んでるのか?コーラルは
あれを見ろよ!海に生えた
キレイな赤い木なんだよ。
これは、
コーラルじゃないね!
はい、次、次出してくれよ。」
ところがマイケルの意に反して
双眼鏡眼鏡を 掛ける事なく、
男は水槽の赤木を示して
出した『枯れ木の白珊瑚』を
端に寄せた。
「はあ?!コーラル扱ってて、
何言ってんのよ?あんたの頭は
何がつまってんの!これじゃあ
次の獲物の価値なんて、
とうてい 解わんないわね!何が
海1番のギルドよ!こんなとこ
こっちから願い下げよ!それと
も何?コーラルは観賞物なの?
研磨して、ジュエリーにして
ないの?なら、
あたしが教えてやろうか?!」
このタコが!!
マイケルは、デスクをバンッと
叩いて大声を張り上げる!
とたんにギルド内は
水を打った様に静かになった!
「こちとら華人の女よ!
子供にみえるからってね、
舐めてもらっちゃ、こまるわ!
どうなのよ!ここじゃコーラル
はジュエリーにしてないの?」
烈火に 捲し立てるマイケルに
双眼鏡眼鏡の男は、呆気に
とられながら
「いや、あんた、そりゃ、
コーラルは水槽で飼えるし
宝石に加工もできるが、白?
死んでるだろ?そんなもん
只の石ころ。これだって、
海神殿の人骨じゃないか?」
端に寄せたモノを
男が示すと、
隣のブースにいてた客が、
「深い海ん中に、潜水能力使って
潜るだろ、発光魔力で灯すと
真っ暗な中に、真っ赤な林が
出てくるんよ
それがレッドコーラルでな。
それを下の岩ごと採ってくる。
硬いからな。切れない。
そりゃ、深海だぞ。場所も秘密
にしとるよ、みんな。白だ?、
そんなのいるのかねぇ。」
ヒョイと顔を出してマイケルに
教えてくれる。
気がつけば、マイケルのブースに
何人かやってきて、
そのうちの1人、
片眼鏡に、髭の男が
「コーラルは、そりゃな観賞だけ
じゃねえよ。磨くとな、極上な
玉にもなる。このウーリュウ藩
島の、アンバー、パールに並ぶ
3大特産のジュエリーだぜぇ。
しかしよぉ、こんな骨みたい
なのがコーラルなのかぁ?
それこそ、お前さんの言う、
枯れ木じゃないのかねぇ。」
デスクから、1つ手に取って
くるくると見定める。
それを突然、
後ろから
獅子の鬣が 雄々しい
燃蒼色した瞳の
益荒男が取り上げた。
「初見の客、巡礼者か。
いい面構えだ。持ってきた物
全て出せ。レサ、これは白色
だが間違いない、コーラルだ。
コーラルが枯死したモノだと
俺の慧眼が言っている。」
手のモノを 強く擦りながら、
誰かの名前を呼び上げる。
「あなたが、ここの長?
ちゃんとみる目あるの?」
マイケルは、腕組みをして
ギルドの長ラジの燃蒼色した瞳を
見据える。
「案ずるな、俺の眼は絶対鑑定を
備えている。お前、コーラルを
知っているんだな?そっちの
小僧、マモか。担いでる枝も、
コーラルの枯死したものだろ」
ラジが呼んだ男は、おどおど
しながらラジの横に来る。
「マサバ、この白いやつを、
レッドコーラルみたいに研磨
しろ。この形のままでいいぞ」
ラジが一本白い小枝をマサバに
渡す。
マサバは目を閉じて、
それを手で包むと
上から下へと、撫でた。
マサバの手元が ほんのり光
収まると、手のモノを
ラジ達に見せる。
「おっ!!象牙みたいになった!
うおい。このテカリ、コーラル
だなあ!確かだぞ、おいラジ」
片眼鏡に髭の男レサが、
マサバの背中を
バンバン叩いて
デスクのモノを全部マサバに
同じようにさせる。
マイケルも、その工程に驚いた。
「え!!そんな簡単に
研磨しちゃうの?何、魔法?」
ヤバいな、異世界!!
ただ、目の前には
割にテロッと艶が出るモノ以外、
スがはいったような
スポンジ状に艶になる
モノもある。
「これは、レッドコーラルと
随分違ってムラがあるな。
枯死しているからか?女よ。」
ラジは燃蒼色した瞳を
マイケルに向けて
真意を問うように
スポンジ状に艶になったモノを
掲げた。
「生木と違って枯死したコーラル
が、土に落ちる間に、虫が食う
と中がスポンジになるけど、
それはそれで、レースコーラル
として、造形美になるの。」
それに、これが切り札じゃない
「白い珊瑚はあるの。他にも」
白珊瑚。
コラリウム・コーノジョイ。
日の本の昔、珊瑚網を
考え出した『トサ』の漁師、
幸之丞の名前がついた
ホワイトコーラル。
その枯れ木はまだ、前菜
なんだよ!!