マラリーア神が現れるという
岩壁に建てられた
八角の堂の前には
左右に燃えたぎる炎が
影牢をつくり
神秘的な雰囲気を醸し出す。
岩壁の割れ目には
炎に照らされた
目玉の様な石が見えた。
「どこの世界にも密教チックなの
はあるものね。それに人が凄い」
白一色の装束。
異世界らしく
色とりどりの髪色の巡礼者が
集まる様子に
マイケルは独り言をいって
「あ、だからなんだねっ。
英雄ラジのギルドが
海を統べる力があるのって、
この『エドウィン窟』の
聖域ギルドだってのもある
からだよね、きっと。うん。」
目の前に7つ並んだ糸車、
『マーニ車』を
手でカラカラと
心地良い音をさせて
回した。
ウーリウ藩島は、
どうやら海底火山が隆起した
島らしい。
マイケルが昨夜泊まった巡礼者の
ベッドや
この『エドウィン窟』の中を
見上げて予想出来るほど、
立派すぎる
凝灰岩と溶岩石を
地質にしている島だと
マイケルは辺りをつけた。
「だから、ここの岩壁みたいに
波風にさらされて出来た
洞窟とか崖地がやたらあるんだ
と思うんだよね。ここなんか
最たるもんだわ。すごい!」
紅白の神殿が
洞窟の中というより、
巨石の下へ、それこそ降って
下敷きになるが如く
入り組み
建てられた、
とんでもない作り方の洞窟霊場。
観光地らしく
説明文が島の成り立ちと合わせて
所々に掲げているのを、
マイケルは読んでいる
ところ。
「太古に悪魔を封印させたって
伝承ね。なっとくするよ。
この巨石で蓋をしてるのかなー
って思うもんね。ね?ヤオ。」
下を見ると、
相変わらずクリンクリンの
牧場色の巻き毛を揺らし
低い位置にあるマーニ車を
カラカラカラカラ遊び
回している。
「マイケーしゃん!まかりーかの
かみさま!まだ、こない?」
「太陽が真上に来たらだから、
もー少しってとこかなっ。」
昨日と違って今日は
マイケルとヤオの2人で行動。
結局、ヤオは
そのままマイケルと
巡礼者ベッドで一緒に寝た。
マモが父親と一緒に
マイケルとの事を
ヤオ家に話してくれると
言ってくれたのだ。
聞くと、ヤオと家族は
あまり関係が良くないらしい。
「まあ、うちも一族意識の方が
つよいから家族らしい家族
じゃないないけどね、、、」
幼少から一族の血の為、帝王学を
学ばせられ、
人脈を拡げる
政治文化経済に精通する
データを叩き込まれた。
体が出来上がれば、
護身術をはじめ、あらゆる
身体能力を高める技を
テクノロジーを駆使して
施された自分が、
結局
一族の力が全く及ばない
異世界、調整世界に
飛ばされて
回せば、己の罪を清めるという
『マーニ車』をカラカラ
ヤオと回しているのだから
今頃一族はどう思っている
だろう?
と
マイケルは自嘲気味に口を
歪めた。
「心配してるより、損した感?
きっと護衛をしてくれてる、
人間の方が心配してるだろう
なあ。あと、友達とかかぁ。」
だからマイケルは、
たった1日で
元世界の誰よりも
この足元で車を回すヤオに、
親愛の情を感じている。
マイケルは徐にヤオを抱き上げ
意味もなく
低い天井の下で
ヤオに高い高いをした。
「ヤオ、そろそろ八角堂へ
行こうか?マラリーア神が
出てくるかもしれないから。」
低い洞窟の
天井に手を伸ばすヤオに
声をかけてマイケルは
神拝殿に歩いていく。
拝殿に行くまでにも
石像が5体並んでいるが、
ウーリウ藩島に来たばかりの
マイケルには
詳しくはわからない。
普段はこの聖場は
首から上の効験があると
書かれ、
目の前の海にも8体の像が
あるとも記されている。
それが示すのは、、
「マイケーしゃん!手!あらう」
マイケルが5つの像を
通りすがり見ていると
人の波の先にある井戸を
見つけたヤオが
トテトテと
井戸に近づいて、
柄杓で掬う水で
もみじな手を濡らした。
「海の真横なのに?水?井戸に
真水がわいてるんだ。すごいね
凝灰岩がフィルターしてるって
ことか。へぇー。手をあらうね」
マイケルもヤオに習い
柄杓で手を浄める。
見ると、そのまま飲んでいる
巡礼者もいる。
『あー、旨い。間に合った!』
『生き返る。走ったからな、、』
無心に真水を飲む
彼等の会話に
魔力が増すという
エドウィン窟でも、この
マラリーア神が現れる時の威力は
それ程凄いのだろうかと
思いつつ
エドウィン窟の岩肌、
八角の堂場へ
人波に合わせて行く。
やがて
そこでマイケルが見た光景は
不思議な現象だった。
日が真上から
エドウィン窟を照らした
であろう
時、
洞窟の中に光の輪が浮かび
上がり、
その眩しい光の輪の中心に
人の形をした 白い影が
浮き彫りになる。
眩しさで影さえ白く見えるのだ!
『マラリーア神が降臨された!』
どこからか、巡礼者が言ったのを
合図に
全員が両手を高く掲げて
今は白い影の腹部にある
洞窟の岩壁の割れ目から
覗く
ドンドンと鼓動に揺れるかの
目玉のような丸い石に
掌を向けた!
始まりを意味する字が
記されている
目玉の石が
迫るりくる感覚く!!
全く魔力を持たない
マイケルも 恐る恐る手を
空に翳す。
『ZOZOビリビリ!!!』
何かが手を介して体に
入ってくる
無性に嫌な感触がマイケルの
全身に走って抜けて行った。
が、それだけ。
身を縮ませて手を掲げていた
マイケルは
ゾクゾクする感触が抜けて
暫くそのままにする。
「ヤオこれで魔力が増えたの?」
マイケルが納得出来ない面持ちで
自然と閉じていた瞼を
開けると
ヤオを見て、
「え!?ヤオ!髪と瞳の色が!」
驚く。
見れば、手をかざしていた
巡礼者達の髪が
まるで潮が満ちるように
ザーッと変化していく。
そして、
「マイケーしゃん!いっぱい!」
マイケルの視線の下では
灰色になった髪と透明の瞳で
少し掛けた歯を出して
ヤオが、ニコッと笑った。
「異世界、半端ない、ね。」
唖然とヤオと周りを
見回すマイケルだけは、
特に変化はない。
『エドウィン窟』
夏至にマラリーア神が
現れるこの聖場は
真水の霊水と
岩壁の割れ目にある
目玉の石を介して
魔力を増幅させる
奇跡を起こす
霊場であり、
洞窟内の5体の像と対に
海の中に8体の像を
祀る聖域でもある。
それが示すのは、、
現在ウーリウ藩島の周囲海域に
沈む海底遺構が
古代カフカス帝国であり、
ウーリウ藩島は
海に沈没する前の
カフカス帝国、ウーリウ神山。
今の藩島城が
かつての神山にあった秘城跡で
ある事を示す。
それも、
悪魔を封印した後に
全てが変化し、
カフカス帝国は海に
ウーリウ神山は藩島へと
現在の姿になったという。
「あたしが、めざす転移門って
とんでもないとこに、あるって
改めてわかったわー。ヤオ!」
マイケルは暫く、
牧場色から灰色に変色した
ヤオのクリンクリンの巻き毛に
指を滑らして
呟いた。
岩壁に建てられた
八角の堂の前には
左右に燃えたぎる炎が
影牢をつくり
神秘的な雰囲気を醸し出す。
岩壁の割れ目には
炎に照らされた
目玉の様な石が見えた。
「どこの世界にも密教チックなの
はあるものね。それに人が凄い」
白一色の装束。
異世界らしく
色とりどりの髪色の巡礼者が
集まる様子に
マイケルは独り言をいって
「あ、だからなんだねっ。
英雄ラジのギルドが
海を統べる力があるのって、
この『エドウィン窟』の
聖域ギルドだってのもある
からだよね、きっと。うん。」
目の前に7つ並んだ糸車、
『マーニ車』を
手でカラカラと
心地良い音をさせて
回した。
ウーリウ藩島は、
どうやら海底火山が隆起した
島らしい。
マイケルが昨夜泊まった巡礼者の
ベッドや
この『エドウィン窟』の中を
見上げて予想出来るほど、
立派すぎる
凝灰岩と溶岩石を
地質にしている島だと
マイケルは辺りをつけた。
「だから、ここの岩壁みたいに
波風にさらされて出来た
洞窟とか崖地がやたらあるんだ
と思うんだよね。ここなんか
最たるもんだわ。すごい!」
紅白の神殿が
洞窟の中というより、
巨石の下へ、それこそ降って
下敷きになるが如く
入り組み
建てられた、
とんでもない作り方の洞窟霊場。
観光地らしく
説明文が島の成り立ちと合わせて
所々に掲げているのを、
マイケルは読んでいる
ところ。
「太古に悪魔を封印させたって
伝承ね。なっとくするよ。
この巨石で蓋をしてるのかなー
って思うもんね。ね?ヤオ。」
下を見ると、
相変わらずクリンクリンの
牧場色の巻き毛を揺らし
低い位置にあるマーニ車を
カラカラカラカラ遊び
回している。
「マイケーしゃん!まかりーかの
かみさま!まだ、こない?」
「太陽が真上に来たらだから、
もー少しってとこかなっ。」
昨日と違って今日は
マイケルとヤオの2人で行動。
結局、ヤオは
そのままマイケルと
巡礼者ベッドで一緒に寝た。
マモが父親と一緒に
マイケルとの事を
ヤオ家に話してくれると
言ってくれたのだ。
聞くと、ヤオと家族は
あまり関係が良くないらしい。
「まあ、うちも一族意識の方が
つよいから家族らしい家族
じゃないないけどね、、、」
幼少から一族の血の為、帝王学を
学ばせられ、
人脈を拡げる
政治文化経済に精通する
データを叩き込まれた。
体が出来上がれば、
護身術をはじめ、あらゆる
身体能力を高める技を
テクノロジーを駆使して
施された自分が、
結局
一族の力が全く及ばない
異世界、調整世界に
飛ばされて
回せば、己の罪を清めるという
『マーニ車』をカラカラ
ヤオと回しているのだから
今頃一族はどう思っている
だろう?
と
マイケルは自嘲気味に口を
歪めた。
「心配してるより、損した感?
きっと護衛をしてくれてる、
人間の方が心配してるだろう
なあ。あと、友達とかかぁ。」
だからマイケルは、
たった1日で
元世界の誰よりも
この足元で車を回すヤオに、
親愛の情を感じている。
マイケルは徐にヤオを抱き上げ
意味もなく
低い天井の下で
ヤオに高い高いをした。
「ヤオ、そろそろ八角堂へ
行こうか?マラリーア神が
出てくるかもしれないから。」
低い洞窟の
天井に手を伸ばすヤオに
声をかけてマイケルは
神拝殿に歩いていく。
拝殿に行くまでにも
石像が5体並んでいるが、
ウーリウ藩島に来たばかりの
マイケルには
詳しくはわからない。
普段はこの聖場は
首から上の効験があると
書かれ、
目の前の海にも8体の像が
あるとも記されている。
それが示すのは、、
「マイケーしゃん!手!あらう」
マイケルが5つの像を
通りすがり見ていると
人の波の先にある井戸を
見つけたヤオが
トテトテと
井戸に近づいて、
柄杓で掬う水で
もみじな手を濡らした。
「海の真横なのに?水?井戸に
真水がわいてるんだ。すごいね
凝灰岩がフィルターしてるって
ことか。へぇー。手をあらうね」
マイケルもヤオに習い
柄杓で手を浄める。
見ると、そのまま飲んでいる
巡礼者もいる。
『あー、旨い。間に合った!』
『生き返る。走ったからな、、』
無心に真水を飲む
彼等の会話に
魔力が増すという
エドウィン窟でも、この
マラリーア神が現れる時の威力は
それ程凄いのだろうかと
思いつつ
エドウィン窟の岩肌、
八角の堂場へ
人波に合わせて行く。
やがて
そこでマイケルが見た光景は
不思議な現象だった。
日が真上から
エドウィン窟を照らした
であろう
時、
洞窟の中に光の輪が浮かび
上がり、
その眩しい光の輪の中心に
人の形をした 白い影が
浮き彫りになる。
眩しさで影さえ白く見えるのだ!
『マラリーア神が降臨された!』
どこからか、巡礼者が言ったのを
合図に
全員が両手を高く掲げて
今は白い影の腹部にある
洞窟の岩壁の割れ目から
覗く
ドンドンと鼓動に揺れるかの
目玉のような丸い石に
掌を向けた!
始まりを意味する字が
記されている
目玉の石が
迫るりくる感覚く!!
全く魔力を持たない
マイケルも 恐る恐る手を
空に翳す。
『ZOZOビリビリ!!!』
何かが手を介して体に
入ってくる
無性に嫌な感触がマイケルの
全身に走って抜けて行った。
が、それだけ。
身を縮ませて手を掲げていた
マイケルは
ゾクゾクする感触が抜けて
暫くそのままにする。
「ヤオこれで魔力が増えたの?」
マイケルが納得出来ない面持ちで
自然と閉じていた瞼を
開けると
ヤオを見て、
「え!?ヤオ!髪と瞳の色が!」
驚く。
見れば、手をかざしていた
巡礼者達の髪が
まるで潮が満ちるように
ザーッと変化していく。
そして、
「マイケーしゃん!いっぱい!」
マイケルの視線の下では
灰色になった髪と透明の瞳で
少し掛けた歯を出して
ヤオが、ニコッと笑った。
「異世界、半端ない、ね。」
唖然とヤオと周りを
見回すマイケルだけは、
特に変化はない。
『エドウィン窟』
夏至にマラリーア神が
現れるこの聖場は
真水の霊水と
岩壁の割れ目にある
目玉の石を介して
魔力を増幅させる
奇跡を起こす
霊場であり、
洞窟内の5体の像と対に
海の中に8体の像を
祀る聖域でもある。
それが示すのは、、
現在ウーリウ藩島の周囲海域に
沈む海底遺構が
古代カフカス帝国であり、
ウーリウ藩島は
海に沈没する前の
カフカス帝国、ウーリウ神山。
今の藩島城が
かつての神山にあった秘城跡で
ある事を示す。
それも、
悪魔を封印した後に
全てが変化し、
カフカス帝国は海に
ウーリウ神山は藩島へと
現在の姿になったという。
「あたしが、めざす転移門って
とんでもないとこに、あるって
改めてわかったわー。ヤオ!」
マイケルは暫く、
牧場色から灰色に変色した
ヤオのクリンクリンの巻き毛に
指を滑らして
呟いた。