「唯斗くん! 暴力はダメっ!」



私は膝の痛みも忘れて、唯斗くんのジャージを思い切り掴んだ。

掴んだ、というより抱きしめた。

今は春馬くんと唯斗くんを引き離したかったから、腰に抱き着きついたのに。



「……」

「……」

「……」



なぜか唯斗くんは固まってしまった。

そして保健室に沈黙が流れる。

誰も、なにも喋らない。

なんなの、この空気は。



「美羽ちゃん」



最初に口を開いたのは春馬くんだった。



「唯斗じゃなくて、僕のほうにおいで?」

「はっ?」



春馬くんはなにを言っているのかな。

意味が分かりません。

なにかのジョークですか。

唯斗くんもそんなに怖い顔しないで。


ため息をつきながら唯斗くんから離れようとする私。

それを阻止したのは、他の誰でもない、唯斗くんだった。