「ちょっと! なにあの女!」

「春馬くんにお姫様抱っこしてもらうなんてズルい!」

「羨ましい……」



そう。

気付けば私は春馬くんにお姫様抱っこをされていたのだ。

春馬くん、女の子を軽々持ち上げるほどの力はなさそうなのに。

むしろお姫様抱っこをされる側だと思う。



「美羽ちゃん。失礼なこと考えていない?」

「……滅相もございません」



怖い、怖いっ。

春馬くんに心を見透かされ、向けられた笑みは悪魔のようだった。



「落ちるのがいやだったら、ちゃんと僕につかまっていてね?」



そう言われてしまえば、私は春馬くんに抱き着くしかない。

ゆっくりと春馬くんの首に手をまわす。

しがみつかなければ落とされそうだし。