「わざとじゃねぇよ? コイツがたまたま飛び出してきて……!」

「……」

「それに、唯斗がいなかったら勝てるもんも勝てねぇよ!」



全ては勝つため。

優勝したいから。

そのためだったら手段はえらばない。


そんなの卑怯だ。


そう思ったのは私だけではなかったみたいだ。

チームメイトはもちろん、クラスメイト、その他のギャラリーの人たちまでが騒ぎ出した。


困った様子の審判。

この場をどうやっておさめるのか……。

みんなが混乱し始めたとき。



「僕が美羽ちゃんを保健室に連れて行くよ」



突然の登場に驚いたのは私だけじゃない。

唯斗くんも目を見開いていた。



「春馬……」

「僕が美羽ちゃんを保健室に連れて行って、体当たりした彼は退場。そうすれば、人数的にもちょうどいいでしょ?」

「まあ……」



唯斗くんは渋い顔をしていたけれど、春馬くんの言葉にうなずいた。

ぽかん、としていた私に春馬くんは笑顔を見せる。


その瞬間。

私の体はふわっと浮き上がった。


状況を理解するまで、約5秒。

ハッとしたのはギャラリーから悲鳴が上がってからだ。