声がした方を向くと、五歳くらいの女の子が歩道橋から律たちを見下ろし、こちらを指さしていた。その女の子を連れているおばあちゃんは、よっぽど驚いたのか腰を抜かしている。

 トラックの荷台に人が乗ってるなんて、そりゃびっくりするよねぇ。驚かせちゃってごめんなさい。
 そうは思った律だったけれど、あんなリアクションをされたのでは少し楽しくなってくる。

 トラックがもう少し走ると、小学校低学年ぐらいの男の子三、四人が公園のジャングルジムから手を振ってきた。

 次は、ベランダで洗濯物を取り込む女性。
 その次は電信柱で工事している男性作業員が。
 驚いたり、フレンドリーに手を振ってくれたりする。

 新條は子供みたいに、無邪気に手を振り返した。 

「ヤバイ私たち有名人になっちゃうよ」「もう既に俺たち超有名人ですよ」

 なんて会話しながら、二人で大笑いする。

 ――あー、笑いすぎてお腹痛い。しばらく降りられないかもしれない心配なんてどこかに吹き飛んでいっちゃったなぁ。

「私……新條とだったから、ダンス係をここまで頑張れたんだと思う。最初は、新條とペアなんて最悪っ! て思ってたけどさぁ~」

 律は、ずっと思っていたことを話す。
 気持ちが緩んだのかもしれない。力まず素直に伝えられたと思う。
 なかなか返事がなくて新條に視線を向けると、じーっと律を見つめていた。