律の叫びに驚きと恐怖が入り混じる。
 無意識に新條の首に手を回す律。
 コンクリートの地面がぐんぐん迫ってくる。

 もうダメだ、と思った瞬間。
 新條は見事に、走ってきたトラックの荷台の上に着地した。

 アルミ製の箱型の荷台の上。
 しばらく無言で抱きしめられていた。

 いい匂いがする。このままずっと、嗅いでいたい……。
 律は密かにそう思った。

 どれくらい時間が経った頃だろう。新條が聞いた。

「先輩、大丈夫ですか?」
「……大丈夫じゃない。なんてことするのよっ。心臓が止まるかと思ったでしょっ!」
「すみません」

「このトラックどこまで行くのよっ?」
「次の配送場所か、コッコ・コーラの倉庫までじゃないですか」

「当分降りられないかもしれないってことじゃん! どうすんのよもう。無鉄砲なんだから!」
「すみません……」

 口から出てくるのは文句ばかり。
 だけれど、ハラハラドキドキして少し楽しかったのも事実。
 律が助けてくれたお礼を伝えようとすると……、後ろで幼い声がした。

「あれ~あんなところに人がいる~!」