もう捕まっちゃう。律がそう思っていると……。

「てめーら! 先輩に指一本でも触れて見ろ、ぶっ殺すぞ‼」

 新條が激怒した。

「新條……」

 新條が自分のためにここまで必死になってくれているのが堪らなく嬉しくて、律はキュンとするような思いに駆られる。 

「ヤベーよ、新條がキレてるよ」
「運動神経抜群だから喧嘩もつえーんだぜ、アイツ」

 周り生徒達が新條の剣幕に怯んでいるのが、青ざめていく顔色でわかった。独り言のようにそう言いつつ身をすくませ、一歩……二歩……と後ずさる。
 だが次から次へと生徒達が追いついてきて、人数は増えていくばかりでとても強行突破できそうにない。

 その時、視界の右端に何かが映り込んだ。
 自動販売機の飲み物を運んでいるトラックだ。校内の自動販売機の補充が終わったらしい。

 追い詰められているベランダの真下にそのトラックが近づく。
 新條は律を抱えた。これぞ、お姫様抱っこだ。

「ちょっと、恥ずかしいから……」

 こんなに生徒が見てるのに、何てことするのよ。
 律がそんなことを考えていた矢先。
 新條は二階のベランダから、律を抱えてひょいと飛び降りた。

 ――ムリムリムリムリ! ここは二階だぞぉぉぉ?

「きゃぁあぁあぁ」