私たちはレストランから出て、タクシーに乗り込み家に向かった。
コートを着る時も、タクシーに乗るときも雅は私をエスコートしてくれる。

雅が私をこうしてエスコートしてくれたのは、誓いの言葉もキスもない結婚式の日と、私が救急車で雅の病院に運ばれた日くらいだ。

一緒にスーパーへ行ったこともない私たちは重い荷物を持ってもらったことも、一緒に道を歩いたことの無い私たちは車道側を雅が歩くなんてこともなかった。

だからこそ、照れてしまう私。
でも雅は無表情のままだった。

それもそうだ。
だって私が離婚を告げてからまだ1時間も経っていないのだから。

この5年で雅が今から向かう、本当は”私たちの家”にいた時間はほとんどないに等しい。