あの雨の日。
グラデーションが悲しいくらいに美しい紫陽花が咲いていたあの日。
彼の浮気を疑い、心がぐちゃぐちゃになった日。
そして、「嫌いになってもいいですか」と何も考えずにぶつけてしまった日。

1人でいると、私の心は、いつもあの日に還ってしまう。
昼も、夜も。

いくら自分の心に余裕が無かったとしても、よくも「嫌いになってもいいか」などと聞けたな……。
そんな風に、自分の無神経さと愚かさをいつも後悔していた。

もしも、自分が逆の立場だったらどうだろうか。
せっかく仕事で踏ん張っていたところで、もし恋人から

「嫌いになりたい」

などと言われたら。
今の私なら、きっと悲しみのあまり死んでしまうかもしれない。

それくらいのことを、私はあの人にしてしまったのだ。