彼の目を見るのが怖くて、どんどん溜まっていく水溜りばかりを見る私。
彼はもしかすると、そんな私にイラついたのかもしれない。

「雨音」
彼は、私の顎をもち、無理矢理自分の方に私の顔をむかせようとする。
私は、どうにか目線だけ逸らす。

「僕がシャワーに入っている間、逃げる気だろう?雨音」
「……そんな訳……」

あった。
今私はまた、彼の目を見るのが怖いのだ。
彼のプロポーズを、勝手な理由で断った私を、彼がどんな目をして見ているのかを、知りたくなかった。

向き合うのがまだ、怖かった。

「離してください」
私が言う。
「ダメだ」
と、彼が強い拒否を示す。

こんな彼も、私は知らない。

「……このままじゃ、2人とも風邪を引くな」

彼はそう言うと、ぐいっと私の手を引っ張り、部屋へと引き入れた。