「やばい!早く屋根の下へ!」
そう言いながら、走り去る人々とすれ違う。

ゴロゴロ、という低い音から、ピカピカという白い光と、ドカンという重い音が、間隔を空けずに迫ってくる。

ふと。
思ってしまった。
歩くのも、疲れてしまった。
雷に打たれたら、痛いだろうか。
それとも、この苦しみから、楽になるだろうか。

雷鳴が轟く中で、なぜか私は怖くなくなっていた。
もっと怖いことを知っているから。