不透明なことは、聞かなきゃ分からない。


疑問を投げかけてみると、彼は微かに笑った。
いたずらが見つかってしまった少年のように。


その表情は、他人同士である私達の間で、彼の前にあるトビラがひとつ、開いたことを知らせてくるよう。




「キミは目を惹く。ヒトリで、一体何を考えながら飲んでいたのか気になっていたんだ。

…多分、あの男よりも前にね」



思いのほか、あまったるくさえ響くその誘いを、嬉しく感じてしまう私がいる。

苦手なはずのあまさに、酔ってみたいとさえ。




「…キミみたいな子は、そんなオトコとは飲まない?」



黙っている私を待ちきれずに、続けて問いかけてきた彼に対して、自然と笑みがこぼれるこの感覚を、大事にしてみてもいいのかもしれない。


時に、流されることで気づく何かもあるから。




「いいですよ、助けてくれたし。
あと、素直さに免じて」



頷いた私に、三日月になった彼の目。
目尻にできた僅かな皺も。


私よりもいくつか大人にみえていた彼の、無防備になったその表情は、素直にかわいくて。案外好きかもしれないと、思った。