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『陽人のキモチは嬉しいよ。
……でも、私、陽人の手を取れない。
まだまだ仕事で自分の地位を築きたい。
思うままに生きていたいの』
1年半前、そんな風に断られたエンゲージリングは、海を渡ってもなお捨てられずに、引き出しの奥で眠ったまま。
せめて別れたくはないとすがっても、アメリカと日本という距離では現実的ではないからと、告げられたサヨナラ。
受け入れられずに何度も送ってしまうLINEに、返ってくる彼女からのコトバは、いつだって淡白で。
だからといって嫌いになれないくらいには、確かな愛が隠れていた。
「……I wanna go back.」
「There are you go again.」
帰りたい。凛花のいる場所へ。
アメリカにきてから口癖のように呟いてきた言葉を溢すと、すっかり親しくなった同僚に、また言ってるよと笑われる。
「Because, I can't imagine. my life without her... It's boring and boring and boring...」
そんな風に笑われたって、凛花のいない毎日はつまらなすぎて、会いたいと、何度だって思う。
海さえ渡らなければ、彼女を手放すことも、彼女が俺から離れていくこともなかったのに。
それか、どこかの研究者が、今すぐにでも、どこでもドアを開発して民間人でも使えるようにしてくれれば、俺たちの間にある問題は、キレイさっぱり解決するのに。
なんて、子供じみたことを思いながら、窓越しに見上げる空は、繋がる日本の地でも、しっかりと凛花を見守っていてくれるだろうか。
できればどうか、彼女の上には雨を降らさないでほしいと、強く願う。
凛花という名前がよく似合う彼女には、いつだって、自由に誇り高く、笑っていてほしいから。