頭でどんなに理解をしていても、くれるコトバにがっかりしてしまうくらいには、傑に対して期待をしていた私がいたことは、事実だけれど。


だからこそ、この先の蜜の味を、知ってはいけないのだ。




「俺ならさ、君の求めるものをあげられる。
満たしてあげられるよ、ね?」



お陰様で、気持ちいくらいに目が覚めた。


傑が私を翻弄させるように、片手で体のラインを撫でながら、あえて耳元へ顔を寄せてささやいて。そこに艶かしいキスを落とそうとしても。



私はもう、1mmも惑わされない。

決してゆれない心で顔を背けて、体を起こす。




「わるいけど、あなたには無理。
私を満たすことはできないみたい」




夢のようなベッドの上で、1人置いて行かれた傑をみて、にっこりと微笑む。




「……自信はあるけど?」



「無理よ。私がほしいものを、あなたは誤解してるし、きっと一生わからない」




私がほしいのは、人肌でも、快楽でもない。


陽人がそそいでくれたような、たしかな愛情。
ありったけの愛だから。



それ以外に、陽人のいない日常を満たせるものなんて、あるはずがなかった。




そして。


そんな陽人との別れを、自分の都合で選んだ以上、私は、陽人以上に、私を大切にしてくれる人以外と、関係を持ってはいけないのだ。



特に、男女間における 満たされる の意味を、勘違いしている人には。好きを知り、深めていく覚悟すらない人には、何があっても。絶対に。



……近づく程に、傷つくだけだから。