驚くほどフィットしてしまった指摘。
気付いてしまった途端、見過ごすことができなくなってしまった感情は、……私をどこに連れていくのだろう。
思考がゆらりとカタチを変えていく中で、傑だけは、行き先を知ってるように思えてくる。
顔に触れてみたって分かるはずがないのに、"そんな顔" を、指先で探そうとした私の手を、傑は追いかけて。まとめて包み込むように、触れた。
一年半ぶりに頬をさらった異性の手は、すっぽり私ごと覆ってしまうのではないかと、錯覚するほどに大きくて。
オンナであったことを、自覚する。
「俺なら、凛香ちゃんにそんな顔させないのにな」
冷静に聴いたら、嘘くさく、台詞みたいな。
絶対が、ない言葉。
それは、スマートな傑にとっては、言い慣れたセリフなんじゃないかと疑ってしまう。
だって、私からこぼれた僅かな動揺さえも読み取って、包み込んだ手を、なでるようにやさしく、そっと握れる人なんて、滅多にいない。
……恋愛経験だって、傑は豊富なのだ。
「……どうやって?」
例え、本心がみえなくても、騙されてみてもいいかと。捕らえられた右手を握り返してみたのは。
陽人と、サヨナラをしてから1年半。
1日も、1秒だって、揺れ動くことのなかった私の頑ななココロと意志が、傑によって、色を変え始めたのも事実だったから。
……知りたくなってしまった。
まるごと受け止めてくれそうな大きな手に、応えてみた先を。
気づいてしまった私の中にあるさみしさが、行きつく先。そして、なくなる術を。
「……でようか」
私がした質問に対する、オトナな提案。
意味を理解しながら、あえて音にはせずに、口角をあげるだけで同意をしたのは、紛れもなく、私の意志だ。