こんなにも簡単に人は恋に落ちるものなのか。
そんな事を考えていたってきっと永遠に答えは見つからないだろう。
恋愛は理論じゃない。
ーーーー時刻は12:30
犯人のわかっている推理小説で顔を隠しながら窓から青年を見つめる。
何恥ずかしがってんだ、私。
そうは思うけれど、これはこれで結構精一杯だ。
元々引っ込み思案な私は、誰かとコミュニケーションとやらをとるのが苦手だった。
今も昔も。
それに声が出ないなら、どうやって接すればいい?
わからない。
自問自答して、無理難題を押し付けられた学生のように頭を捻る。
「ちょっ、舞ちゃん!!
どしたの!?」
突然の青年の焦り声。
私は思わず窓から身を乗り出していた。
青年の前には泣きじゃくっている女の子が立っている。
かわいらしいピンクチェックのパジャマを着ている。
患者だという事は確かだ。
「拓兄の嘘つき!!」
女の子、いや、舞ちゃんは青年に突っ掛かった。
「私、拓兄が言ってた事信じてずっと待ってたのにぃ・・・。お姉ちゃんに会いたいよぉ」
「おっ落ち着いて!!」
青年が必死に舞ちゃんを落ち着かせようとしているが、少々遅かった。
「会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたいのぉぉぉ!!!」
舞ちゃんは泣き叫んだ。
どうやら、少しのパニック障害を持っているようだ。
ここからでも確認できる顔の傷も自分でつけたのだろう。
その後
舞ちゃんは数人の看護婦さんによって病室に運び込まれた。