「これいりませんか!?」

青年は茶色い袋を私に向ける。

そんな事言われても私は声が出ない。

2階から更に首を伸ばし、見下ろすと青年はまた高々と袋を掲げる。

「なんか、ずっと見ていたようなんで・・・。
余り物で良かったら!!」

少し照れたような、はにかんだ笑顔を見せる。

私は自然と頷いていた。

青年の笑顔はまるで太陽のよう。
などと言ったら大袈裟かもしれないが、今の私にはそんな風に映っていた。

「ここじゃ届かないんで、


投げていいですか?」


・・・へ?
反応を返す前に袋は宙を舞っていた。

ふわり

まさにそんな効果音がとても似合う。
綺麗な放物線を描きながら一瞬にして私の腕に収まった。

思わず拍手する。

「ありがとうございましたっ!!」

青年はぺこりと一礼すると、子供達が集まる広場へと駆けていった。

私はその背中を見つめながら袋を開けてみる。

甘ったるくて香ばしい匂いが周りに広がる。

メロンパンだ。

恥じらいもなく、がぶりと噛み付く。

甘くて甘くて甘くて。

おいしくて。

笑みが零れる。

頬がほてっている。

手で触れてみると、
やっぱり、
頬の体温の方が高い。

激しく波打つ心臓。

一体私・・・。

もう一度メロンパンを口に運ぶと同時に、
ぶわっと風が吹き込んだ。

夏の風。

私の髪が揺れて、木がさわさわと音をたてる。

葉と葉の隙間からサッカーボールを追い掛ける青年が目にとまった。

ドキンーーーー

・・・わかった。

私、

恋したんだ。