窓に頬杖をついて中庭を見渡す。

私の病室は2階なので、遊んでいる子供の表情などがそれなりに見える。

キャッキャッと騒ぎながら走り回る子供を見て思う。


この子達も入院してるんだよな。


つまり、私みたいに声が出なかったり、感情が表に出せなかったりとこの病院には様々な患者がいる。

それなのに楽しげに走っている子供を見ると気持ちが暖かくなった。

「あー!!拓兄だ!!」

二つ結びの小さな女の子が今まさに病院の門を乗り越えている白いワゴンを指差す。

拓兄、拓兄!!と叫びながら、周りの子供達が一斉にワゴンに駆け寄る。

ワゴンには

『崎村ベーカリー』

と印されている。

パン屋さん・・・?

私が首を捻っている間にワゴンは中庭の中央に到着した。

そして、

「お前ら危ないぞ!!」

軽く苦笑しながらワゴンの助手席から出て来たのは、私と同い年ぐらいの青年。

すらりと背が高く、白いエプロンが眩しいくらいに輝いている。

「だってやっと拓兄が来てくれたんだもん!!」

幼稚園生ほどの小さな男の子が、青年のエプロンにぴょんぴょんと跳びはねながらしがみつく。

「悪りぃ悪りぃ。
でももう夏休みになったから毎日来れるぞ!!」

わーい!!と子供達が手を挙げて喜ぶ。

夏休みと言っているから学生だろうか。

「おしゃべりはそこまでだよ!!
早く準備準備!!」

運転席からはお母さんと思われる人物が下りて来た。

「へいへい。
じゃあ後でなっ!!」

子供達に手を振り青年は準備を始めた。

私はなんだろう、とただそれを見つめていた。