崎村くんは車に駆け寄り、しっかりと鍵を差し込んだ。

ガチャリと開いた音がする。

「あの、今度、お礼させて下さい!!」

崎村くんは爽やかな笑顔で私に言った。

え、お礼・・・?

それって、

またあなたに会えると

近くにいれるという事なのかな。

わからないけど、私はただ俯いていた。

「今度お見舞い行きますからねっ

それじゃ、おやすみなさい」

そう言って、崎村くんは車に乗り込んだ。

・・・運転出来るんだろうか?

と思ったが、車はするりと滑るように動き出した。

私は去っていく車を見つめながら、小さく息をはいた。

安堵感からか

あなたが去った寂しさからか

そのどちらかもしれないけれど。




俺は暗い田舎道を、車で丁寧に運転しながら考えていた。

鈴野響子の事を。

相変わらず無口で、

やけに頑固で、

いつも悲しげな目をしていて。

それと、

時々見せる彼女の控えめな笑顔が、脳裏にしっかりと焼き尽いている。

また

会いたい

そうは思うけれど、

俺はなんにも彼女の事

知らないんだよな。