「・・・あの、もう夜になっちゃいますから、帰ったほうが・・・」

崎村くんの何度目かの忠告。

私は首を振る。

もう夕焼けは漆黒に覆われて、
光りは星と、近くに佇んでいる街灯のみだ。

誰も私を止めに来ないのは、亜由美さんが止めてくれてるのかな?

なんて頭を巡らせながら、私は手を動かす。

暗くてよく見えないので、目を細めながら。

「・・・なんか、俺、鈴野さんにばっか助けてもらってますよね」

突然崎村くんが口を開いた。

私はちょっと小首を傾げた。

助けてもらっているのは、私のほうなのに。

「舞ちゃんの事も、俺、気付けずに彼女に無神経な事言って、それで悩ませてしまったり。
そして舞ちゃんはあなたに頼りました。
助けてくれました

・・・それに今も。」

彼は悲しげに俯いた。

「情けないです。
俺ってすごく弱いし。」

何が。

何が弱いの?

夏休み削って、病院来て、見ず知らずの子供達と遊んで、いつもいつもみんなに笑顔を振り撒いている、あなたの

どこが弱いというの?

私の方が

わがままで、いつも引きこもりみたいで、記憶を思い出そうともしない、

あなたに気持ちを伝える勇気もない。

そんな私の方が

ずっとずっと弱いのに。