朝起きると

私の机の上に小さな段ボール箱が置いてあった。

「あ、それお母さんからだよー。」

看護婦さんが朝食を運びながら事もなげに言った。

やけに淡々としている看護婦さん。

初めて見る顔だなぁ。

私の視線に気付いたのか、看護婦さんはぺこりとお辞儀をすると、

「私、亜由美と言います。
最近来たばかりの新人ですが、よろしくねっ」

にこりと笑った時のえくぼがとても印象的だ。

私も軽く会釈をし、とりあえず机の段ボールを開けてみる事にした。

静かに周りが朝食を食べているさなか、私は激しい音をたてながら段ボールを開いた。

中には何着かの服と、一通の手紙。

『響子へ
暑くなってきたので、薄着を送ります。

今度そっち行くからね』

お母さんからのそっけない手紙。

それに、
わざわざ私の所に来なくていいのに。

お母さんは働いている。
そのおかげで、私はぬくぬくとした入院生活をおくれているのだ。

ちなみに
お父さんはいない。

何故かはわからない。

やっぱりそこだけ記憶が抜けているみたい。

「えっ!?
これすごく高いブランドの服じゃない!?」

亜由美さんが目を丸くして服を見つめている。

私はお母さんが好きじゃない。

自分が働いているからって好き勝手お金使って、
こんな高い布切れ買って・・・。

馬鹿みたい。