西日が私達にあたって、重なった二つの影がすぅっと伸びた。

気付いたら灰色の雲は過ぎ去り、オレンジ色の空が広がっていた。

少しの間、私はただ舞ちゃんを撫でて、

それしか出来なくて。

舞ちゃんは小さくすすり泣いていた。

決してわんわん泣こうとせずに、思い出したお姉ちゃんの想いを、面影を、噛み締めながら泣いているんだと思うと、

私まで涙が込み上げてきた。

そうしたって何にも世界は変わらない事は百も承知だ。

舞ちゃんと比べものにならないくらい私は弱いのに。

なのに、
私は涙を静かに流してしまった。

「・・・響子ちゃん・・・?
泣いてるの?」

手で必死に拭っても、それは溢れ出す。

だから
あっさりと舞ちゃんに気付かれてしまった。

ダメだな、私。

「泣かないで。」

お願い。
そんな優しい言葉をかけないで。

「ごめんね、ごめんねっ・・・」

謝らないで。

あなたは悪くないの。

あなたはとっても強いから。

こんなに弱くてちっぽけな私にそんな言葉・・・。

あぁ。
伝えたいよ。

声、出したいよ。

その時、

カランコロン

バルコニーのさんに置いていた、私のオレンジジュースが転がり落ちた。

ゆっくりと中身が零れだし、私の側でレンガの床に大きな染みを作っていく。



少し、ピンときた。
伝えたいなら伝えよう。
前向きに。

冒険しようじゃないか、私。