「どうしたのかな?」

先生はにこりと笑うと、万年筆を置いた。

今、診察室の中で先生と二人きり。

山口先生はこの病院の院長であり、医師である。
すごく優しくて評判がとてもいい。

まぁ私は来たばっかりでよくわかんないんだけど。

「本を投げたんだってね。
何か嫌な事があったのかな?」

私は首を振った。

嫌な事じゃなくて、
ーーーーー嫌な気分だったの。

何かが蘇りそうだったのに、パタンと閉じてしまって・・・。

むしゃくしゃしたんだ。

「・・・嫌な事があったら、いつでも発散しなさい。」

俯いて動かない私に先生は言った。

「そっちの方が気持ちいいでしょう!!」

以外だった。

そんな答えが返ってくるなんて思わなかった。

先生はきょとんとしている私の肩を叩くと

「いつでも相談に来なさい。」

いたずらな笑みを浮かべてその場を去っていった。

数分の、

あっさりしたカウンセリング。

でも

私の気持ちは随分軽くなっていた。

不思議。

ーーーーーーー先生が人気の意味、ちょっとわかった気がするな。